【初学者向け】権利が消えちゃう?宅建試験に出る「消滅時効」の基本

【初学者向け】権利が消えちゃう?宅建試験に出る「消滅時効」の基本 宅建

こんにちは!宅建試験の勉強、順調に進んでいますか?民法の勉強をしていると、「数字」がたくさん出てきて頭が痛くなる…という方も多いかもしれませんね。特に今回のテーマである「消滅時効」は、似たような年数がいくつか登場するため、初学者が混乱しやすいポイントの一つです。

「借金には時効がある」なんて話をドラマなどで聞いたことがあるかもしれません。宅建試験では、単に「時効がある」というだけでなく、「いつから数えて何年で時効になるのか?」という細かいルールが問われます。

でも、安心してください。法律の条文をそのまま丸暗記しようとすると大変ですが、「原則」と「例外」を分けて整理すれば、実は覚えることはそこまで多くありません。今日は、得点源にしやすいこの「消滅時効」について、一緒に整理していきましょう。

そもそも「消滅時効」とは?なぜ権利が消えるの?

まず、消滅時効のイメージを固めましょう。例えば、あなたが友人に100万円を貸したとします。当然、「返して!」と請求する権利がありますよね。しかし、あなたが何十年も請求せずに放置していたらどうでしょうか?

法律では、「権利があるのに長い間その権利を行使しない人(眠っている人)は保護しない」という考え方をします。また、何十年も経ってから「あの時の金を返せ」と言われても、証拠がなくなっていたり、記憶が曖昧だったりして混乱を招きますよね。そこで、一定期間が経過したら「権利を消滅させてしまおう」というのが消滅時効の制度です。

ちなみに、民法には独特の用語がたくさん出てきます。もし勉強中に「善意・悪意」などの言葉でつまずきそうになったら、こちらの記事で民法の基礎用語を解説していますので、あわせて確認しておくと理解が早まりますよ。

【最重要】一般的な債権の時効期間「5年と10年」

さて、ここからが試験対策の本番です。「いつ時効になるのか?」という期間(時効期間)は、大きく分けて2つの基準があります。どちらか片方の期間が満了した時点で、時効が完成します。

ポイント
  • ① 債権者が権利を行使できることを「知った時」から5年間
  • ② 債権者が権利を「行使できる時」から10年間

この「知った時から5年」と「行使できる時から10年」はセットで覚えてしまいましょう。例えば、お金を貸した相手の居場所も連絡先も知っていて、「返して」と言える状態なら、それを知った時から5年放置すると時効にかかります。逆に、自分では気づいていなくても、権利を行使できる状態になってから10年経てば、やはり時効にかかってしまいます。

「人の命や身体」に関わる不法行為は期間が伸びる

次に注意したいのが、交通事故や暴力などの「不法行為」による損害賠償請求権です。これらも時効にかかりますが、少しルールが異なります。特に重要なのは、「物の損害(物損)」と「人の損害(人損)」で期間が違う点です。

種類 主観的起算点(知った時) 客観的起算点(行為の時)
物損(物を壊された) 被害者等が損害&加害者を知った時から3年 不法行為の時から20年
人損(ケガをさせられた) 被害者等が損害&加害者を知った時から5年 不法行為の時から20年

以前はすべて「3年」でしたが、法改正により人の生命・身体の侵害(人損)については「5年」に延長されました。「命や体に関わることは、より手厚く保護しよう」という趣旨ですね。試験では、ここを「物損なのに5年」「人損なのに3年」と入れ替えてひっかけ問題にしてくることがあるので注意しましょう。

また、「占有回収の訴え」(奪われた物を取り返す訴え)については、占有を奪われた時から1年経過すると提起できなくなります。これは期間が非常に短いので、あわせてチェックしておきたいところです。

時効のスタート地点「起算点」を整理する

先ほど「権利を行使できる時から10年」とお伝えしましたが、この「権利を行使できる時(起算点)」が具体的にいつなのか、というのが試験でよく問われます。債権の種類によってスタート地点が変わるため、ここを整理できれば得点力がグッと上がります。

「えっ、契約した日がスタートじゃないの?」

実は違うんです。契約の内容によって、「いつから請求できるか」が変わるからですね。

主なパターンを表にまとめましたので、ざっくりとイメージを掴んでください。

債権の種類 いつから時効が進む?(起算点)
確定期限のある債権(例:12月31日に返済する) その期限が到来した時(12月31日からスタート)
不確定期限のある債権(例:父が死亡したら返済する) その期限が到来した時(父が死亡した時からスタート)
期限の定めがない債権(例:いつでもいいから返済して) 債権が成立した時(契約したその時からスタート)
停止条件付債権(例:宅建に合格したらあげる) 条件が成就した時(合格した時からスタート)
債務不履行による損害賠償(相手が約束を破った) 本来の債務の履行を請求できる時(本来の引渡予定日など)

特に間違いやすいのが、「期限の定めがない債権」です。「いつでも返していいよ」という契約の場合、貸主は「いつでも返してと言える(権利行使できる)」状態にあるため、契約成立と同時に時効のカウントダウンが始まります。

ちなみに、「停止条件」という言葉が出てきましたが、これは「合格したらご褒美」の例で解説しているこちらの記事でも詳しく触れています。「条件が整うまで権利が発生しない(停止している)」というイメージを持つと分かりやすいですよ。

まとめ:今日の重要ポイント

いかがでしたか?消滅時効は「数字」と「起算点」の組み合わせが大切です。一度にすべて覚えようとせず、まずは「5年・10年」の基本を押さえて、次に「不法行為の特例」へと知識を広げていきましょう。

最後に、今日これだけは覚えておきたいポイントをまとめました。

ポイント
  • 一般的な債権は、「知った時から5年」または「行使できる時から10年」で消滅する。
  • 不法行為による損害賠償は、物損なら「知った時から3年」、人損なら「知った時から5年」(行為の時からは共に20年)。
  • 期限の定めのない債権は、「債権成立時」から時効がスタートする。

まずはこの3点をしっかり頭に入れて、過去問演習に進んでみてください。少しずつ知識を積み重ねて、合格に近づいていきましょう!