こんにちは。宅建試験の勉強、順調に進んでいますか?法律の条文や数字がたくさん出てくると、「本当に覚えられるのかな……」と不安になってしまうこと、ありますよね。私自身も最初は、似たような用語の違いに頭を抱えていた一人です。
でも、焦らなくて大丈夫です。一つひとつの制度には必ず「なぜそうなっているのか」という理由があります。その理由さえ分かってしまえば、丸暗記しなくても自然と頭に残るようになりますよ。
さて、今回のテーマは「宅建業保証協会(弁済業務保証金)」です。
前回までの学習で、「宅建業を始めるには営業保証金を供託所に預けないといけない」という話をしました。でも、その額は本店だけで1,000万円。これから不動産屋さんを始めようという人にとって、いきなり1,000万円を用意するのはかなりハードルが高いですよね。
「そんな大金、用意できないよ!」という人のために用意されているのが、今回解説する保証協会の制度です。この仕組みを使えば、初期費用をグッと抑えることができます。
試験でも非常によく出る分野ですが、営業保証金との違いや、独特の手続きの流れで混乱しやすいポイントでもあります。今日はこの「保証協会」の仕組みを、初学者の方にもイメージしやすいように噛み砕いて整理していきましょう。
営業保証金の制度は、万が一お客さんに損害を与えてしまったときに備えて、あらかじめ国(供託所)にお金を預けておくルールでした。しかし、1,000万円は大金です。
そこで、「1人では大金を用意できなくても、みんなで少しずつお金を出し合えば、大きな保証ができるんじゃないか?」という考えで作られたのが宅建業保証協会です。
つまり保証協会に入れば、1,000万円も用意しなくて済むんですか?
その通りです。保証協会に加入すれば、本来1,000万円必要なところを、なんと60万円で済ませることができるんです。
この金額の差は大きいですよね。そのため、世の中のほとんどの宅建業者は、この保証協会に加入して営業しています。
ここで、試験対策として絶対に間違えてはいけない用語の区別があります。それは、「誰にお金を払うか」によって、お金の名前が変わるということです。
私たちが保証協会に支払うのは、あくまで「分担金」です。そして、その分担金を集めた保証協会が、私たちの代わりに供託所にドカンとお金を預けてくれます。これを「弁済業務保証金」と呼びます。
「分担金」と「保証金」、似ていますが、主語が誰なのか(業者が払うのか、協会が払うのか)を意識して区別していきましょう。
では、具体的にいくら払えばいいのか、いつ払えばいいのか。ここからは試験で頻出の数字とタイミングを見ていきます。ここは得点源にしやすい部分ですよ。
保証協会に加入しようとする場合、「加入しようとする日まで(加入前)」に、分担金を納付しなければなりません。
納める金額は以下の通りです。
例えば、本店1つと支店2つで開業する場合、60万円 +(30万円 × 2)= 120万円 を納付します。
営業保証金だと本店1000万円+支店500万円×2=2000万円も必要でしたから、それに比べると破格の安さですね。
【重要ポイント】この納付は、「金銭」のみです。営業保証金は国債や株券などの「有価証券」でもOKでしたが、保証協会への分担金は現金でなければなりません。「えっ、証券ダメなの?」と引っ掛け問題が出やすいので注意してくださいね。
事業がうまくいって、新しい支店を出したとしましょう。この場合、増設した日から2週間以内に、その支店分の分担金(30万円)を納付する必要があります。
ここで怖いのが、「もし2週間以内に払わなかったらどうなるか」です。
うっかり忘れてたら、どうなっちゃうんでしょうか……?
実は、社員としての地位を失います。つまり、保証協会をクビになってしまうんです。
保証協会を追い出されると、当然「安い金額で営業できる権利」も失います。そうなると、原則通り1,000万円単位の営業保証金を、たった1週間以内に用意して供託しなければならなくなります。これは実質的に廃業の危機ですよね。だからこそ、「2週間以内」という期限は命綱なんです。
さて、ここからが保証協会の学習で一番ややこしい、でも試験によく出る「トラブルが起きたとき」の話です。お客さんに損害を与えてしまい、保証金から賠償(還付)をした場合、その減ったお金をどうやって元に戻すのか。この流れをストーリーで追いかけましょう。
もし宅建業者のミスでお客さんが損害を受けたら、お客さんは保証金から弁済を受けることができます(これを「還付」といいます)。
ただし、お客さんがいきなり供託所に行ってお金をもらえるわけではありません。まず、保証協会の認証を受ける必要があります。「確かにこの業者が悪いことをしました」というお墨付きをもらってから、供託所に請求するのです。
ちなみに、還付される金額の上限は、「もし営業保証金制度を使っていたら供託していたはずの額」です。実際に払ったのが60万円(分担金)だとしても、被害者は最高1,000万円(営業保証金相当額)まで受け取ることができます。ここが保証協会のすごいところですね。
還付が行われると、供託所にあるお金が減ってしまいます。この穴埋め(不足額の補充)の手続きが、試験では非常によく問われます。登場人物の動きを整理しましょう。
ここでも出てきました、「2週間」。もし、この2週間以内に支払わないと、先ほどと同じく「社員の地位を失う」ことになります。そして地位を失ったら、1週間以内に高額な営業保証金を供託しなければなりません。
「通知が来たら2週間以内に払う! 払わないとクビ!」このリズムをしっかり覚えておいてください。
最後に、忘れがちですが大切なポイントを2つ確認します。
事務所を閉鎖したり、保証協会を辞めたりした場合、預けていた分担金を取り戻すことができます。原則として、「誰か文句ある人はいませんか?」と世間に知らせる公告を6か月間行わなければなりません。
しかし、例外があります。「一部の事務所を廃止した場合」です。例えば、支店を1つ閉めた場合などは、公告なしで直ちに取り戻すことができます。これは試験で「公告が必要である」というひっかけ問題としてよく出題されます。
| ケース | 公告の有無 |
|---|---|
| 保証協会の社員でなくなった時(脱退など) | 必要(6ヶ月以上) |
| 一部の事務所を廃止した時 | 不要(直ちに取り戻せる) |
契約が成立するまでの間に、お客さんに対して「うちは〇〇保証協会に入っていますよ」という説明(供託所等の説明)をしなければなりません。ただし、相手が宅建業者である場合は、この説明は省略できます。プロ同士なら説明しなくても分かるでしょ、ということですね。
お疲れ様でした。保証協会(弁済業務保証金)の仕組み、なんとなくイメージできましたか?1000万円が60万円で済む便利な制度ですが、その分、ルールや期限が細かく決まっています。
今日覚えるべきポイントを整理しました。まずはこれだけ頭に入れて、問題集にチャレンジしてみてください。
【今日の「これだけは!」】
特に「2週間」という数字は、保証協会のキーワードです。迷ったら2週間を思い出してくださいね。基本事項の積み重ねが、合格への一番の近道です。少しずつ、着実に知識を増やしていきましょう!

