【宅建・民法】「心裡留保」は冗談のこと?有効・無効のラインを初学者向けにやさしく解説

【宅建・民法】「心裡留保」は冗談のこと?有効・無効のラインを初学者向けにやさしく解説 宅建

こんにちは。宅建試験の勉強、順調に進んでいますか?

法律の勉強を始めると、普段使わないような難しい漢字や言葉がたくさん出てきて、それだけで「うっ……」となってしまうこともありますよね。私自身も最初は、テキストを開くたびに知らない日本語と格闘しているような気分でした。

今日のテーマは、まさにそんな難解用語の代表格、「心裡留保(しんりりゅうほ)」です。

漢字だけ見ると「心の裏に何かを留めて保つ……?」と難しそうに感じますが、実はこれ、日常会話でいうところの「冗談」「嘘」のことなんです。

「冗談で言ったことが、法律上どう扱われるのか?」この視点を持つだけで、驚くほど内容が頭に入ってくるようになります。今日は、心裡留保の基本的な仕組みと、試験で狙われやすい「第三者との関係」について、一緒に整理していきましょう。

「心裡留保」とは?まずは言葉の意味をイメージしよう

まずは、言葉の意味から紐解いていきましょう。法律用語としての「心裡留保」とは、簡単に言うと「本心ではないことを、自分でわかっていながらあえて口に出すこと」を指します。

具体的には、「内心では売るつもりなんて全くないのに、『私の土地を君に売ってあげるよ』と相手に言う」ようなケースです。まさに「冗談」や「嘘」ですよね。

民法では、このように「心の中で思っていること(意思)」と「口に出して言ったこと(表示)」が食い違っている状態を、意思の不存在と呼んだりします。

では、この「冗談の契約」は有効なのでしょうか? それとも無効になるのでしょうか?ここが試験の第一関門です。

原則は「有効」!冗談を言った本人が責任を負う

結論から言うと、心裡留保による意思表示は、原則として「有効」です。

「えっ、冗談なのに有効になっちゃうの?」と驚くかもしれませんが、法律の世界では「言ったことには責任を持ちましょう」という考え方が基本にあります。冗談を言った本人(表意者)よりも、それを信じてしまった相手方を守る必要があるからです。

つまり、Aさんが冗談で「土地をあげる」と言い、Bさんがそれを真に受けて「ありがとう、もらうよ!」と答えたなら、原則として契約は成立し、Aさんは土地を渡さなければなりません。

例外として「無効」になる2つのパターン

ただし、どんな時でも冗談が有効になるわけではありません。相手方が「守るに値しない場合」は、契約は無効になります。

具体的には、以下のどちらかに当てはまる場合です。

ポイント
  • 悪意(あくい):相手方が、それが冗談であることを知っていた場合
  • 有過失(ゆうかしつ):相手方が、不注意によって冗談だと気づかなかった場合

「あ、この人また冗談言ってるよ」とBさんが知っていたなら(悪意)、Bさんを保護する必要はありませんよね。また、普通に考えれば冗談だとわかる状況なのに、Bさんが不注意で信じてしまった場合(有過失)も、やはり保護されません。

逆に言えば、契約が有効になるのは、相手方が「善意(知らない)」かつ「無過失(落ち度がない)」の場合のみです。

この「善意無過失なら有効」「それ以外(悪意または有過失)なら無効」という分岐点は、非常に重要ですのでしっかり覚えておきましょう。

宅建試験では、民法に限らず「言葉の定義」や「要件」を正確に覚えているかが合否を分けます。これは宅建業法の学習でも同じことが言えます。例えば「宅地」や「建物」の定義なども、今のうちにしっかり確認しておくと安心です。【宅建初学者向け】「宅地建物取引業」とは?最初に覚えるべき重要ポイント

試験に出る!「第三者」が登場した時のルール

さて、ここからが本番です。AさんとBさんの当事者間だけでなく、そこに「第三者Cさん」が登場した場合のルールを見ていきましょう。宅建試験では、このパターンが非常によく出題されます。

こんな事例をイメージしてください
ポイント
  • Aさんが冗談(心裡留保)で、Bさんに土地を売った。
  • Bさんはその事情を知っていた(悪意)。→ この時点でA・B間の契約は無効
  • しかし、Bさんは自分の土地になったフリをして、事情を知らないCさん(第三者)にその土地を転売してしまった。

この場合、本来の持ち主であるAさんは、Cさんに対して「最初の契約は無効だから、土地を返して!」と言えるでしょうか?

Aさんは「善意の第三者」には勝てない

答えは、「言えない(対抗できない)」です。

民法では、「当事者間の契約が無効でも、その無効を善意の第三者には主張できない」と定められています。

いくらBさんが悪意で契約が無効だったとしても、何も知らずに取引に入ってきたCさんには罪がありません。「冗談を言ったAさん」と「何も知らないCさん」を天秤にかけたとき、法律はCさんを守ることを選んだのです。

【最重要】第三者は「無過失」でなくてもいい!?

ここで、多くの受験生が引っかかるポイントがあります。先ほどの当事者間のルールでは、「相手方が保護されるには善意・無過失が必要」でしたよね。

しかし、第三者Cさんが保護されるための要件は、「善意」だけでOKなのです。つまり、無過失である必要はありません。

【ここが試験に出る!】第三者Cは、心裡留保について知らなかった(善意)であれば、多少の不注意(過失)があったとしても保護されます。

「Cさんにちょっと不注意があったとしても、元はと言えば冗談を言ったAさんが悪いんだから、Aさんは我慢しなさい」というイメージを持つと分かりやすいかもしれませんね。

この「相手方は善意無過失が必要」だけど、「第三者は善意だけでいい」という違い。ここを入れ替えて出題してくるひっかけ問題が頻出ですので、必ず区別して覚えておきましょう。

ちなみに、契約トラブルに関する知識としては、契約が有効になった後に物件に不備があった場合の「契約不適合責任」なども重要論点ですが、まずは今回の「契約の効力そのもの」の話をしっかりマスターすることが先決です。【宅建試験】「契約不適合責任」の特約はここだけ見る!プロ対アマの重要ルール

まとめ:今日の覚えるべきポイント

いかがでしたか?「心裡留保」という難しい漢字も、「冗談・嘘」と読み替えれば、少し身近に感じられたのではないでしょうか。

最後に、今日これだけは覚えて帰ってほしいポイントをまとめました。

ポイント
  • 心裡留保(冗談)は、原則として「有効」。
  • 相手方が「悪意」または「有過失」の場合のみ、「無効」になる。(相手は善意無過失なら守られる)
  • 第三者が現れた場合、その人が「善意」なら、本人は無効を主張できない。
  • 第三者は「無過失」でなくても保護される(善意だけでOK)。

特に最後の「第三者の要件(善意のみ)」は、本試験でも迷いやすいポイントです。「冗談を言った人が一番悪いのだから、第三者は少しぐらい不注意でも守ってあげよう」というストーリーで記憶に定着させてくださいね。

毎日の積み重ねが、必ず合格へとつながります。焦らず、一つひとつの用語を自分の言葉で説明できるようにしていきましょう!