【宅建・民法】代わりに取り立て!?債権者代位権の仕組みと「できないこと」のルール

宅建試験の勉強、毎日おつかれさまです。民法の分野に入ると、聞き慣れない言葉がたくさん出てきて、「もう漢字を見るのも嫌!」となってしまうこと、ありますよね。

私自身も勉強を始めたばかりの頃は、「代位(だいい)」という言葉を聞いて、「代わり?位(くらい)?どういうこと?」と頭が真っ白になった経験があります。

でも、安心してください。今日のテーマである「債権者代位権(さいけんしゃだいいけん)」は、仕組みさえイメージできてしまえば、実はとても人間味のある、わかりやすいルールなんです。

今回は、この債権者代位権について、登場人物の関係図を整理しながら、試験で狙われやすいポイントに絞って解説していきます。「難しそう」というイメージを、「なんだ、そういうことか!」に変えていきましょう。

債権者代位権とは?「代わりに私がやる!」という制度

まずは、言葉の意味から整理していきましょう。

債権者代位権とは、一言でいうと「借金を返さない人の代わりに、その人が持っている権利を、貸主が勝手に使っちゃう制度」のことです。

これだけだと少し乱暴に聞こえるかもしれませんね。具体的な事例で見てみましょう。この分野では、Aさん、Bさん、Cさんの3人が登場します。

ポイント
  • Aさん(債権者):Bさんに2,000万円を貸している人。
  • Bさん(債務者):Aさんにお金を返さないといけない人。お金がないと言っている。
  • Cさん(第三債務者):Bさんから1,000万円を借りている人。

この状況で、BさんはAさんへの返済期限が来ているのに、「お金がないから返せない」と言っています。しかし、よく調べてみると、BさんはCさんに対して「1,000万円返せ!」と言う権利(貸金債権)を持っていたのです。

本来なら、BさんがCさんから1,000万円を取り立てて、それをAさんへの返済に充てればいい話ですよね。でも、Bさんがやる気を出さず、Cさんへの取り立てを放置していたらどうなるでしょうか?

Aさんとしては、「BさんがCさんから回収してくれれば、自分にも返済されるのに!」とヤキモキしてしまいます。

そこで登場するのが債権者代位権です。

Aさんは、「Bさんがやらないなら、私が代わりにやる!」と言って、Bさんの代わりにCさんに対して「金返せ!」と請求することができるのです。

このように、誰が誰に対して権利を持っているか(債権者・債務者の関係)を整理することが、民法攻略の第一歩です。もし、「どっちが債権者だっけ?」と迷いそうになったら、一度基本に戻って確認してみると良いですよ。

【宅建・民法】どっちが債権者?売買契約でパニックにならないための基礎知識

債権者代位権を使うための「4つの要件」

さて、とても便利な債権者代位権ですが、いつでも自由に使えるわけではありません。

もしAさんが、些細なことでいちいちBさんの生活に口を出して「代わりにやってやる」と言い出したら、Bさんはたまったものではないですよね。プライバシーの侵害にもなりかねません。

そのため、この権利を使うには、いくつかの厳しいルール(要件)があります。試験ではここがよく問われますので、しっかりチェックしていきましょう。

1. 債務者(B)が無資力であること

これが一番の基本です。「無資力(むしりょく)」とは、借金を返すだけのお金や財産を持っていない状態のことです。

もしBさんが、Cさんへの貸金以外にもたくさんの預金や不動産を持っているなら、Aさんはそこから回収すればいいだけの話です。わざわざCさんを巻き込んで代位権を行使する必要はありません。

つまり、「これを回収しないと、Aさんが貸したお金が返ってこない!」というギリギリの状態(無資力)でないと、この権利は使えないのです。

2. 履行期が到来していること

AさんがBさんに貸したお金の返済期限(履行期)が来ていないのに、「将来返せなくなりそうだから」といって勝手に代位することは、原則としてできません。

ただし、例外として「保存行為(ほぞんこうい)」の場合は、期限が来る前でも代位することができます。これは少し細かい知識ですが、「時効を止める」など、権利を消滅させないための行為のことです。

ちなみに、「時効」については、放っておくと権利が消えてしまう怖いルールですので、あわせて確認しておくと安心です。

【初学者向け】権利が消えちゃう?宅建試験に出る「消滅時効」の基本

3. 債務者(B)が自ら権利を行使していないこと

もしBさんが、すでに自分でCさんに対して「金返せ!」と裁判を起こしているなら、Aさんが横から出ていく必要はありません。

4. 一身専属権ではないこと(最重要!)

ここが今回の記事で一番覚えてほしいポイントです。

Bさんが持っている権利の中には、「一身専属権(いっしんせんぞくけん)」と呼ばれる、その人本人じゃないと行使できない特別な権利があります。これらは、いくらBさんがお金に困っていても、Aさんが代わりに使うことはできません。

試験に出る!代位できない「一身専属権」の具体例

では、具体的にどんな権利が「Aさんが代わりに使えない(一身専属権)」のでしょうか?

イメージしてほしいのは、「家族関係や個人の尊厳に関わること」です。他人が土足で踏み込んではいけない聖域だと考えてください。

① 離婚による財産分与請求権

Bさんが離婚をしたとして、元配偶者に「財産を分けて」と言うかどうかは、Bさんの気持ち次第です。「お金がないなら離婚の財産分与を請求しろ!」と、赤の他人であるAさんが強制するのはおかしいですよね。

ただし、一度「○○万円支払う」と具体的にお金が決まった後は、ただの金銭債権になるので代位できる場合がありますが、原則として請求する段階では代位できません。

② 慰謝料請求権

誰かに殴られたり、名誉を傷つけられたりした時の慰謝料。これも、「許せないからお金を請求する」のか、「もう関わりたくないから請求しない」のかは、被害者であるBさんの心が決めることです。

③ 生活保護受給権

生活保護を受ける権利も、Bさん自身の生存に関わる非常に個人的な権利です。これを借金取りであるAさんが代わりに申請してお金を持っていくなんてことは、当然認められません。

このように、民法には「善意・悪意」のような独特な用語だけでなく、漢字から意味を推測しにくい言葉が出てきますが、「それは個人のプライバシーや心の問題だから、他人は口出しできない」とイメージすれば、丸暗記しなくても判断できるようになります。

宅建民法の基礎!「善意・悪意」や「対抗する」など頻出の法律用語をわかりやすく解説

まとめ:今日の重要ポイント

いかがでしたでしょうか。債権者代位権は、登場人物が3人になるので複雑に見えますが、「AさんがBさんの権利を使ってCさんから回収する」という図が描ければ怖くありません。

最後に、今日の学習でここだけは覚えておいてほしいポイントを整理します。

  • 債権者代位権は、債務者(B)が「無資力」でないと使えない
  • 債務者(B)の「一身専属権」は、代位できない(離婚の財産分与、慰謝料など)
  • 差し押さえが禁止されている権利(年金など)も代位できない

特に「一身専属権」のひっかけ問題は、宅建試験で本当によく出ます。「他人が口出しできないプライベートな権利は代位できない」という感覚を、ぜひ大切にしてください。

今日覚えた知識が、本番での1点につながるはずです。少しずつ、着実に進んでいきましょう!