【宅建・民法】地震で引き渡し不能!その時「危険負担」はどうなる!?

こんにちは!宅建試験の勉強、順調に進んでいますか?民法の分野に入ると、「聞いたこともない漢字の熟語」がたくさん出てきて、心が折れそうになる瞬間があるかもしれませんね。私も学習を始めた当初は、法律用語の堅苦しさに何度もテキストを閉じたくなったものです。

さて、今回のテーマは「危険負担(きけんふたん)」です。

文字だけ見ると「危険」な「負担」なんて、なんだか怖そうなイメージがありますよね。でも、安心してください。これは「もしも引渡し前に家がなくなってしまったら、代金はどうするの?」という、とても常識的で人間味のあるトラブル解決のルールのことなんです。

このルールを知らないと、試験で点数を落とすだけでなく、実務でもお客様に説明できなくなってしまいます。今回は、この危険負担について、初学者の方がつまずきやすいポイントに絞って、わかりやすく解説していきます。

肩の力を抜いて、ストーリーをイメージしながら一緒に学んでいきましょう!

「危険負担」とは?家が消えたら代金はどうなる?

まずは、「危険負担」という言葉の意味と、どんな場面で使われるルールなのかを整理しましょう。

宅建の試験勉強では、具体的な場面をイメージすることが記憶定着の近道です。例えば、あなたが念願のマイホームを購入する契約を結んだとします。しかし、鍵を受け取って引っ越す前日に、「落雷」や「地震」などの災害で家が全焼・全壊してしまったとしたらどうでしょう?

せっかく買った家が、私のせいじゃないのに燃えちゃった……。これって、売主さんのせいでもないですよね?

そうなんです。売主が火をつけたわけではなく、あくまで「自然災害」などが原因の場合ですね。これを法律の世界では「債務者の責めに帰すべき事由によらない履行不能」なんて言ったりします。

「どちらが損を被るか」という問題

家がなくなってしまったので、売主は当然、あなたに家を引き渡すことができません。これを「履行不能(りこうふのう)」と言います。

この時、一番の問題になるのが「代金」です。

ポイント
  • 売主:「契約はしたんだから、代金3000万円は払ってください」
  • 買主:「家がないのに、お金だけ払うなんて嫌です!」

このように、売主にも買主にも落ち度がない(過失がない)トラブルが起きた時、「どちらがその損失(リスク)を負担するのか?」を決めておくルールが、まさに危険負担なのです。

ちなみに、売買契約における「債権者・債務者」の関係や、「権利・義務」の考え方が少しあやふやだなと感じる方は、以前解説したこちらの記事(「物権・債権」のイメージ解説)も合わせて読んでみてください。民法の基礎体力がグッと上がりますよ。

【結論】買主は「代金の支払い」を拒絶できる!

では、現在の民法ではどのように決まっているのでしょうか。結論から言うと、「買主は、代金の支払いを拒絶することができます」

つまり、先ほどの例で言えば、あなたは「家がもらえないなら、お金は払いません!」と堂々と主張できるのです。

「債務者主義」という考え方

これを法律用語で説明すると、家の引渡し義務を負っている売主(債務者)が、家を引き渡せないというリスク(危険)を負担する、という意味で「債務者主義」と呼ばれます。

売主からすれば、「家は燃えてなくなるし、お金ももらえない」という踏んだり蹴ったりの状態になりますが、買主からすれば「家が手に入らないのにお金を払う」という理不尽を避けられるわけです。

このルールは、「同時履行の抗弁権(どうじりこうのこうべんけん)」という考え方とセットで覚えると理解が早いです。「あなたが家をくれないなら、私もお金を払いません」という、ギブ・アンド・テイクの関係が守られているのですね。

試験で狙われる!「契約前」と「契約後」の引っかけ

さて、ここからが宅建試験で合否を分ける重要なポイントです。「家が燃えてしまったタイミング」が、契約の前だったか、後だったかで、適用される法律のルールが全く異なるのです。

1. 契約「後」に滅失した場合

ここまで解説してきた通り、契約を結んだ後に、地震や台風などで建物がなくなった場合は、「危険負担」の問題となります。買主は代金の支払いを拒絶できます。

2. 契約「前」にすでに滅失していた場合

では、契約書にハンコを押す前に、実はすでに建物が火事で燃え尽きていた場合はどうなるでしょうか?この場合、そもそも「存在しない建物」を売買契約したことになります。

このケースでは、危険負担のルールは適用されません。代わりに、「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」や「債務不履行」の問題として処理されます。

現在の民法では、たとえ契約時に建物がなくても契約自体は「有効」と扱われます。その上で、売主は当然建物を引き渡せないので、「売主の債務不履行(責任)」となります。

なるほど!「いつなくなったか」で使うルールが変わるんですね。

その通りです。試験問題では「契約締結前に〜」とさらっと書いてあることが多いので、読み飛ばさないように注意が必要ですよ。

「債務不履行」や「損害賠償」については、以下の記事で詳しく解説しています。ここも試験によく出るエリアですので、不安な方は復習しておきましょう。

債務不履行=約束破り!宅建試験で頻出の「損害賠償」と「解除」のルール

まとめ:今日の「これだけ」覚えよう!

いかがでしたか?「危険負担」という言葉の響きは難しいですが、中身は「家をもらえないなら、お金は払わなくていい」という、買主を守るための当然のルールでしたね。

最後に、今日の学習で絶対に持ち帰ってほしいポイントを3つに絞りました。試験当日に思い出せるよう、これだけは頭に入れておいてください。

ポイント
  • 危険負担とは?:契約後に、売主のせいじゃない理由(地震など)で引渡しができなくなった時のルールのこと。
  • 買主はどうなる?:代金の支払いを「拒絶」できる。(お金を払わなくていい)
  • 契約前に燃えていたら?:危険負担ではなく「債務不履行」として処理される。

民法は、一つひとつのルールを「自分だったらどう思うか?」という視点で考えるのが攻略のコツです。一度に全てを完璧にする必要はありません。まずは「拒絶できる!」という結論だけでもしっかり押さえて、次のステップへ進んでいきましょう。

これからも、宅建合格を目指して一緒に頑張りましょうね!