こんにちは。宅建試験の勉強は順調に進んでいますか?
法令上の制限という分野に入ると、急に聞きなれない法律用語が増えて、「ウッ」となってしまうこと、ありますよね。私も勉強を始めたばかりの頃は、「権利移動? 転用? 日本語なのに意味が頭に入ってこない……」とテキストの前でフリーズしていたのをよく覚えています。
でも、安心してください。農地法は、一度イメージがつかめれば、宅建試験の中でも特に点を取りやすい「得点源」になる科目なんです。
今日は、農地法を攻略するための第一歩として、基本となる「用語の意味」をじっくり解説していきます。ここを曖昧にしたまま条文の暗記に入ると、後で必ず混乱します。まずは土台をしっかり固めていきましょう。
私自身もゼロからスタートして、この考え方で理解を深めることができました。一緒に頑張りましょう!
まずは、この法律が守ろうとしている対象、「農地」と「採草放牧地」について見ていきましょう。ここには、宅建試験で非常によく出る「あるルール」が存在します。
農地法において一番大切なルール、それは「現況(げんきょう)主義」です。
少し難しそうな言葉ですが、要するに「書類上の記録(登記簿の地目)に関係なく、今現在、実際に何に使われているか(見た目)で判断する」ということです。
登記簿に「山林」や「原野」って書いてあっても、実際には畑として使っていたらどうなるんですか?
その場合は、農地法上の「農地」として扱われます!逆に、登記簿が「田」や「畑」でも、すでに家が建っていて完全に宅地として使われていれば、それは農地とは言いません。
農地法での「農地」の定義は、「耕作の目的に供される土地」です。つまり、人間が労力を費やして植物を栽培している土地のことですね。
ここで注意したいのが「休耕地(きゅうこうち)」です。一時的に耕作を休んでいる土地はどうなるでしょうか?これは、「いつでも耕作しようと思えばできる状態」であれば、客観的に見て農地と判断されます。「今は作物を植えていないから農地じゃないよ!」という言い訳は通用しない、と覚えておきましょう。
次に「採草放牧地(さいそうほうぼくち)」です。あまり聞き慣れない言葉ですよね。
これは、「農地以外の土地で、主として耕作または養畜の事業のための、採草または家畜の放牧の目的で使用されるもの」を指します。
簡単に言うと、牛や馬のエサになる草を取ったり、家畜を放し飼いにしたりしている牧場のような土地のことです。もちろん、これも登記簿上の地目ではなく、現況(客観的事実)に基づいて判断します。
試験対策としては、「農地」のほうが規制が厳しく、「採草放牧地」はそれより少し規制が緩い、というイメージを持っておくと、後の学習がスムーズになりますよ。
農地法の用語で初学者が一番混乱しやすいのが、「権利移動」と「転用」の違いです。ここがごちゃ混ぜになると、有名な「3条・4条・5条の許可」の問題が解けなくなってしまいます。しっかり区別していきましょう。
まず、「権利移動(けんりいどう)」についてです。これは、農地や採草放牧地そのものはそのままに、「所有者や使う人が変わること」を指します。
具体的には以下の行為が含まれます。
- 所有権の移転(売買、贈与など)
- 賃貸借権の設定(貸し借り)
- 使用貸借権の設定(タダで貸し借り)
- その他、地上権や永小作権などの設定
つまり、「土地の使い道は畑のままだし、見た目も変わらないけれど、耕す人がAさんからBさんに変わる」というケースです。農地法では、新しく耕す人が「ちゃんと農業をやってくれる人なのか?」をチェックしたいので、許可(3条許可)が必要になります。
土地を担保にお金を借りる「抵当権(ていとうけん)の設定」はどうなりますか?
いい質問ですね!ここが試験によく出るポイントです。抵当権の設定は、権利移動には含まれません。
なぜなら、抵当権を設定しても、土地を使って耕作する人は変わらないからです。銀行は土地を耕しませんよね。「使用・収益する人が変わるかどうか」が、権利移動かどうかの判断基準だと覚えておいてください。
次に「転用(てんよう)」です。これは、「農地を農地以外の土地にすること」を指します。
例えば、以下のようなケースです。
- 畑を潰して、駐車場にする
- 田んぼを埋め立てて、自宅を建てる
- 農地を資材置き場にする
ここでは「人」が変わるかどうかは関係なく、「土地の姿・形・用途」が変わることに注目します。大切な農地が減ってしまう行為なので、これには許可(4条許可)が必要になります。
ここで一つ、試験対策上の重要な注意点があります。「農地以外の土地を、頑張って耕して農地にする場合」は、転用には当たりません。農地法は「農地を守るための法律」なので、農地が増える分にはウェルカムなんですね。
最後に、「転用目的の権利移動」です。これは、文字通り「転用(使い道を変える)」と「権利移動(人が変わる)」をセットで行うことです。
例えば、「農地を持っているAさんが、そこに家を建てたいBさんに土地を売る」ような場合です。AさんからBさんに所有権が移り(権利移動)、かつ、土地も農地から宅地に変わります(転用)。
この場合は、一番厳しいチェックが必要になるため、農地法5条の許可が必要になります。不動産業者が農地を買って分譲住宅地にするケースなどがこれに当たりますね。

基本用語の意味がわかったところで、試験でひっかけ問題としてよく出る「採草放牧地の転用」について触れておきましょう。
先ほど、「農地を農地以外にする」のが転用(4条許可が必要)だと説明しました。では、「採草放牧地を、採草放牧地以外のもの(例えば駐車場)にする」場合はどうでしょうか?
実は、採草放牧地を採草放牧地以外にする(転用する)場合、4条許可は不要なんです。
これ、すごく不思議に感じませんか?理由は、「農地(田畑)」に比べて「採草放牧地」は、食料生産という面での保護の必要性が少し低いと考えられているからです。所有者自身が自分の土地(採草放牧地)を別の用途に変えるだけなら、「まあ、いいでしょう」と許可が不要になっています。
ただし、これが「転用目的の権利移動(5条)」になると話は別です。「採草放牧地を宅地にしたい人に売る」という場合は、権利移動が絡むため、しっかり5条許可が必要になります。
この「4条は不要だけど、5条は必要」というパターンは、過去問でも繰り返し問われている論点なので、今のうちに整理しておきましょう。
いかがでしたか?言葉の意味がはっきりすると、条文の内容もイメージしやすくなりますよね。最後に、今日絶対に覚えて帰ってほしいポイントを整理しました。これだけ頭に入れて、テキストを閉じてください。
- 農地かどうかは「現況(見た目)」で決まる!(地目や休耕中かは関係なし)
- 権利移動=「使う人」が変わること。(抵当権設定は含まない!)
- 転用=「土地の用途」が変わること。(農地を減らす行為)
- 農地以外の土地を「農地」にするのは、転用ではない。(許可不要)
- 採草放牧地をつぶして別の用途にするだけなら、4条許可は不要。
農地法は、この「用語の定義」さえしっかりしていれば、許可が必要かどうかの判断問題で迷わなくなります。まずは焦らず、この基礎を固めておきましょう。一歩ずつ進めば、必ず合格点に届きますよ!

