【宅建業法】所有権留保等の禁止とは?「3/10」の数字と例外をわかりやすく解説

【宅建業法】所有権留保等の禁止とは?「3/10」の数字と例外をわかりやすく解説 宅建

こんにちは。宅建試験の勉強、順調に進んでいますか?毎日仕事や家事に追われていると、なかなかテキストを開く時間が取れない日もありますよね。私も勉強を始めたばかりの頃は、法律用語が呪文のように見えて、「本当にこれを覚えられるのかな…」とテキストの前でため息をつくことがよくありました。

さて、今回のテーマは、宅建業法の8種規制の一つである「所有権留保等の禁止」です。

「所有権留保(しょゆうけんりゅうほ)」なんて四字熟語が出てくると、それだけで難しそうに感じてしまいますよね。でも、安心してください。この分野は、実は「常識的に考えれば当たり前のこと」を言っているだけなんです。

「所有権留保」とは何なのか、なぜそれが禁止されているのか、そして試験で狙われる「例外」は何なのか。今日はこの3点を整理して、確実に得点源にしていきましょう。少しずつ理解を積み重ねていけば、必ず合格点は取れますよ。

所有権留保とは?まずは言葉の意味をイメージしよう

法律の勉強で一番の壁になるのは、聞き慣れない用語ですよね。まずは「所有権留保」という言葉を、私たちの身近な例でイメージしてみましょう。

「所有権留保」って、漢字ばかりで意味が全然イメージできません…。どういう状態のことですか?

簡単に言うと、「商品は渡したけれど、代金を全部払い終わるまでは、本当の持ち主(名義)はお店のままにしておくこと」だよ。車のローンなどが分かりやすい例だね。

「所有権」を「留保(手元に残す)」すること

例えば、あなたが300万円の車をローン(分割払い)で買ったとします。車自体は納車されて毎日乗ることができますが、車検証の「所有者」の欄を見ると、あなたの名前ではなく、クレジット会社やディーラーの名前になっていることがあります。

これは、もしあなたがローンの支払いを途中でやめてしまった(滞納した)場合に、売主がすぐに車を引き揚げられるようにするためです。つまり、「代金完済までは、所有権を売主に留めておく(=留保する)」という仕組みです。

これを不動産取引に当てはめてみましょう。宅建業者が売主で、一般の人が買主の場合(これを8種規制といいます)、この「所有権留保」を自由に認めてしまうとどうなるでしょうか?

買主はせっかく高いお金を出して家を買って住み始めたのに、いつまでたっても自分の名義(登記)になりません。もしその間に、売主である宅建業者が倒産してしまったら?その家は業者の財産として処分されてしまい、買主は家を追い出されてしまうかもしれません。これは、不動産のプロではない一般の買主(素人)にとって、あまりにもリスクが大きいですよね。

だからこそ、宅建業法では「原則として、所有権留保は禁止(=早く買主に名義を渡しなさい)」というルールを定めているのです。

所有権留保等の禁止:覚えるべき「原則」と「例外」

ここからが試験対策の本番です。宅建試験では、「原則はどうなのか?」そして「例外的に許されるのはどんな時か?」が繰り返し問われます。特にこの分野では、「数字」「条件」がポイントになります。

原則:引渡しまでに登記を移転しなければならない

宅建業者が自ら売主となり、宅建業者ではない買主に「割賦販売(かっぷはんばい=分割払い)」を行う場合、原則として、物件を引き渡すまでに、所有権を買主に移転(登記)しなければなりません。

【原則】売主(業者)は、物件の引渡しまでに、買主へ所有権移転登記をしなければならない。= 所有権を自分の手元に残しておく(留保する)ことはできない!

「鍵を渡すなら、名義もちゃんと渡しなさい」ということですね。これは買主を守るためのルールですから、非常に強力です。

例外:所有権を留保してもよい2つのケース

しかし、何が何でも「絶対に先に名義を渡せ!」としてしまうと、今度は売主である宅建業者が困ってしまうケースがあります。例えば、買主がまだお金を全然払っていないのに名義だけ先に渡してしまうと、そのまま代金を踏み倒されて、家を勝手に売られてしまうかもしれません。

そこで、宅建業法では、バランスを取るために2つの例外を認めています。この例外に当てはまる場合だけは、業者は「所有権留保」をしても(=まだ名義を渡さなくても)OKとなります。

ここが試験に出る超重要ポイントです。以下の2つをしっかり覚えましょう。

ポイントは、「お金をどれくらい受け取ったか」「残りの支払いは確実か」の2点です!

例外①:受け取った額が代金の「10分の3」以下の場合

もし、買主がまだ代金の少ししか払っていないなら、業者が名義を渡すのを渋るのも理解できますよね。その基準となる数字が「10分の3(30%)」です。

ポイント
  • 受領額が代金の3/10以下 → 所有権留保してOK(名義はまだ渡さなくていい)
  • 受領額が代金の3/10を超えた → 原則通り、所有権を移転しなければならない

例えば、3,000万円のマンションの場合、その3/10は900万円です。手付金や中間金などで受け取った合計額が900万円以下なら、業者は「まだ名義は渡せません」と言って良いのです。逆に、901万円以上受け取ったら、業者はすぐに登記を移転する義務が発生します。

「3/10(十分の三)」という数字は、必ず暗記してくださいね。

例外②:買主が担保措置を講じる見込みがない場合

もう一つの例外は、たとえ代金の3/10を超えて受け取ったとしても、「残りの代金の支払いが危うい場合」です。

具体的には、以下のようなケースです。

ポイント
  • 残代金について、買主が「抵当権の設定」や「保証人を立てる」などの担保措置を講じない(見込みがない)場合

業者が「代金の30%以上はもらったけど、残りの70%を本当に払ってくれるか不安だな…。担保も用意してくれないし…」という状況であれば、自己防衛のために所有権を留保することが認められます。

逆に言えば、「代金の3/10を超えて支払った」かつ「残代金の担保措置も講じた」のであれば、業者は絶対に所有権を留保してはいけません。ここを整理しておくと、ひっかけ問題に対応できるようになります。

試験に出やすいポイントを整理しよう

では、これまでの内容を踏まえて、実際に試験でどのような点が問われるかを確認しましょう。過去問の選択肢を見て、「あれ?どっちだっけ?」とならないように整理します。

「特約」は無効になる

8種規制すべてに共通することですが、「買主に不利な特約は無効」です。

例えば、契約書にこんな一文があったとします。「代金を全額完済するまでは、いかなる理由があっても所有権は売主に留保されるものとする」

これは無効です。もし買主がすでに代金の3/10を超えて支払っているなら、この特約に関係なく、業者は所有権を移転しなければなりません。「契約書に書いてあるからOK」とはならないのが、強行規定である宅建業法の怖いところであり、買主にとっては頼もしいところです。

「10分の3」の計算には手付金も含む

「受け取った額」が3/10を超えたかどうかを判断する際、その金額には手付金や中間金など、名目を問わず受領したすべての金銭が含まれます。試験問題で「手付金として〇〇万円、中間金として〇〇万円を受領し…」と出たら、それらを足し算して、代金の30%を超えているかチェックしましょう。

状況 所有権留保は? 備考
受領額が3/10以下 OK(できる) まだ支払いが少ないので、業者は名義を守れる
受領額が3/10超 NG(できない) 原則として、すぐに名義を渡す必要がある
受領額が3/10超+担保措置なし OK(できる) たくさん払ったけど信用(担保)がないなら、業者は名義を守れる
まとめ:今日覚えるのはこれだけ!

所有権留保等の禁止について、イメージは掴めましたか?難しそうな言葉ですが、要は「お金をある程度払ったら、ちゃんと自分のものにさせてよ!」という買主の権利を守るルールです。

最後に、今日の学習の要点をまとめます。寝る前にこれだけ見返して、記憶に定着させましょう。

ポイント
  • 原則:宅建業者は、物件の引渡しまでに登記(名義)を買主に移転しなければならない。
  • 例外①:受け取ったお金が代金の「10分の3以下」なら、留保してもOK。
  • 例外②:10分の3を超えていても、買主が残代金の「担保措置」をしてくれないなら、留保してもOK。
  • 特約:「完済まで絶対に名義は渡さない」といった買主に不利な特約は無効

「3/10」という数字と、「担保がなければ渡さなくていい」という理屈。この2つを押さえておけば、この分野の問題は怖くありません。

今日はここまで勉強したご自身を、しっかり褒めてあげてくださいね。一歩ずつの積み重ねが、合格への一番の近道です。また次の記事で、一緒に勉強していきましょう!