こんにちは!今日も宅建学習お疲れ様です。
民法の中でも、特に初学者の方が「ごちゃごちゃになってしまう」と感じやすいテーマの一つに、「制限行為能力者」に関するルールがあります。
未成年者や成年被後見人といった保護が必要な人が結んだ契約は、後から取り消せるルールになっていますが、それだと「取引の相手方」はいつ契約がなくなるか分からず、とても不安ですよね。
そこで今回は、その不安を取り除くために設けられた「催告権(さいこくけん)」という、取引の相手方を守るためのルールに焦点を当てて解説していきます。
この催告権は、「誰に催告するか」によって、その後のルールが変わってくるため、整理するのが難しい論点です。
この記事を読めば、催告権の3つのパターンが整理でき、宅建試験で確実に得点できるようになるはずです。一緒に頑張っていきましょう!
まず、今回のテーマの背景にある基本的なルールを確認しましょう。
制限行為能力者(未成年者など)が行った契約は、後から取消しができます。
これは、判断能力が十分ではない人を保護するための、民法の重要なルールです。
しかし、制限行為能力者と取引した相手方(例えば、未成年者に土地を売った宅建業者など)にとっては、いつ契約が取り消されてしまうか、ずっと不安定な状態に置かれてしまいます。
この取引の不安定さを解消し、相手方を保護するために民法が認めているのが「催告権」という仕組みです。
催告権とは、取引の相手方が、制限行為能力者側に対して、「この契約を追認(契約を確定させること)しますか?それとも取消しますか?」と、1ヶ月以上の期間を定めて回答を求める権利のことです。
つまり、「いつまでも宙ぶらりんな状態では困るから、早く決めて返事をください」と、制限行為能力者側を急かすための権利なんですね。
ポイントは、「取引の相手方から、制限行為能力者側へ」行う点です。制限行為能力者側から相手方に催告することはできません。
また、この催告権は、契約が取り消されるか確定するまで、つまり追認することができる状態になれば行使できます。
催告権について宅建試験で最も問われるのは、「誰に催告したか」によって、「制限行為能力者側から返事がない場合に、どのような結論になるか」という点です。
メモにあるように、催告する相手方は大きく3つのパターンに分けられます。
ここが、丸暗記ではなく、それぞれの『当事者の状況』をイメージすることが、理解を深める一番のコツです。
未成年者や成年被後見人は、自力で契約の内容を理解し、追認するかどうかを判断するのが難しいとされています。
そこで、保護者である法定代理人(親権者や成年後見人)に催告し、1ヶ月以上の期間内に返事がない場合は、どうなるでしょうか。
と、法律は考えます。
保護者は、制限行為能力者のために、きちんと検討して返事をすべき立場にあるため、返事がないことは追認として扱われます。
被保佐人や被補助人は、成年被後見人よりは判断能力がありますが、特定の重要な行為には保佐人や補助人の同意が必要とされています。
この保佐人や補助人も、法定代理人と同様に、本人をサポートし契約を確定させるかどうかを検討する責任があるため、ルールは基本的に同じです。
保護者側の返事がない場合は、追認したものとみなされると覚えておきましょう。
一番ややこしいのが、この「本人に催告した場合」です。
被保佐人や被補助人とはいえ、ある程度の判断能力がありますから、取引の相手方は、制限行為能力者本人に直接「どうしますか?」と催告することもできます。
しかし、彼らが追認するためには、保護者(保佐人・補助人)の同意が必要です。
その状態で、もし本人から返事がなかったら、どう解釈するのが本人に一番優しいでしょうか。
と、法律は考えます。制限行為能力者本人を保護するのが、民法の基本だからです。
本人が保護者の同意なく行う行為は、返事がない=同意なし=取消し、と理解すると整理しやすいです。
未成年者・成年被後見人本人に対しては、そもそも有効な意思表示ができないため、催告しても意味がないとされています。
この論点は、次の表で頭の中にインプットしていくと、試験直前でも思い出しやすくなります。
| 誰と契約したか? | 誰に催告できるか? | 返事がない場合どうなるか? | 覚えるコツ |
|---|---|---|---|
| 未成年者成年被後見人 | 保護者(法定代理人)制限行為能力者でなくなった者 | 追認とみなす | 保護者は責任重大!放置=OK |
| 被保佐人被補助人 | 保護者(保佐人・補助人) | 追認とみなす | 保護者は責任重大!放置=OK |
| 被保佐人被補助人 | 制限行為能力者 本人 | 取消しとみなす | 本人保護優先!同意がないと判断 |
特に、保護者に催告した場合は**「追認とみなす」、被保佐人・被補助人本人に催告した場合は「取消しとみなす」**という、返事がない場合の結論の違いをしっかりと区別してください。
最後に、制限行為能力者側が保護に値しない行為をした場合のルールも確認しておきましょう。これは、試験でひっかけ問題として出やすいポイントです。
例えば、未成年者が大人であるかのように装ったり、親(法定代理人)の同意書を偽造したりして、取引の相手方を騙して(だまして)契約した場合を「詐術(さじゅつ)」といいます。
制限行為能力者を保護するのが民法の基本ですが、さすがに相手方を積極的に騙した場合まで保護する必要はありません。
つまり、「未成年だから」という理由での取消しはできなくなり、契約は確定(有効)します。
相手方を騙して取引したなら、もはや保護するに値しない、という考え方です。
ただし、この「詐術」は、単に「私は未成年者ではないですよ」と言っただけでは該当せず、相手方に「この人は制限行為能力者ではない」と信じ込ませるような積極的な手段を用いた場合に限られる点も頭に入れておきましょう。
今回は、制限行為能力者の契約に関して、取引の相手方を守るための「催告権」について解説しました。
特に「返事がない場合にどうなるか」は、試験で頻出の論点ですので、今日の学習でこの違いをインプットしていきましょう。
今日、ここだけ覚えましょう!
この3つのポイントを押さえるだけで、この論点は得点源になります。表をもう一度見直して、頭の中で整理していけると安心です。
今回の知識で、民法の複雑なルールに対する不安が少しでも解消されれば嬉しいです。次の学習も頑張ってください!

