こんにちは!宅建の勉強、順調に進んでいますか?民法の分野に入ると、普段聞き慣れない言葉がたくさん出てきて、「もう漢字を見るのも嫌!」となってしまうこと、ありますよね。私自身も学習を始めた当初は、法律用語の堅苦しさに何度も心が折れそうになりました。
でも、安心してください。難しい言葉も、日常のイメージに置き換えてしまえば、決して怖いものではありません。今日のテーマは「相殺(そうさい)」です。
「相殺」とは、簡単に言えば「貸し借りをチャラにすること」。これだけ聞くと単純そうですが、試験では「どっちから言い出したか」や「相殺できないケース」がよく狙われます。この記事では、相殺の基本的な仕組みから、試験で引っかけられやすいポイントまでを、初学者の方にもわかりやすく整理してお伝えします。
今日の目標は、「自働債権」と「受働債権」の違いをマスターし、相殺ができないNGパターンを覚えること。一緒に一つずつ、不安を解消していきましょう!
まずは、言葉の意味から整理していきましょう。相殺とは、お互いに同種の債権(お金など)を持っている場合に、その対当額について債権・債務を消滅させることを言います。もっと噛み砕いて言うと、「お互いの借金をプラスマイナスゼロにして、決済の手間を省くこと」です。
例えば、あなたが友人のBさんに100万円を貸しているとします(あなたのBさんに対する貸金債権)。一方で、あなたはBさんから車を買って、代金100万円を支払う義務があるとします(Bさんのあなたに対する代金債権)。
この時、わざわざあなたがBさんに100万円を払い、その直後にBさんがあなたに100万円を返してくるのは、手間がかかりますよね。それなら、「この前の貸したお金と、車の代金、これでチャラにしよう!」と言えば一発で終わります。これが「相殺」です。
さて、ここからが宅建試験の少しややこしいところです。相殺には、「言い出しっぺ」が持っている債権と、「言われた側」が持っている債権に、それぞれ名前がついています。
「自分から働きかける(アクションする)のが自働債権」、「受け身になるのが受働債権」とイメージすると覚えやすいですよ。試験問題では、この「自働」と「受働」という言葉を使って、「〇〇の場合は相殺できるか?」と聞いてきます。どっちが主語なのかを見失わないようにしましょう。
「チャラにしよう!」と言えばいつでも相殺できるわけではありません。相殺ができる状態のことを「相殺適状(そうさいてきじょう)」と言い、以下の要件を満たす必要があります。
【相殺ができる主な要件】1.お互いの債権が対立していること2.債権の種類が同じであること(お金とお金など)3.自働債権の弁済期が到来していること4.相殺が禁止されていないこと
ここで特に試験に出やすいのが、3つ目の「自働債権の弁済期が到来していること」です。
「弁済期」とは、支払わなければならない期限のこと。「言い出しっぺ(自働債権者)」は、自分の持っている債権が期限に来ていないと、「チャラにしよう」とは言えません。相手からすれば「まだ返さなくていい時期なのに、勝手に終わらせるな」となるからです。
逆に、受働債権(相手の債権)は、弁済期が来ていなくても相殺できます。これは、自分が「期限の利益(まだ払わなくていいという権利)」を放棄して、「早めに払ってチャラにするよ」と言う分には、相手に迷惑がかからないからです。
少しややこしいですが、「言い出す側(自働)の期限は来ていないとダメ!」と覚えておきましょう。
ここでもう一つ、試験によく出る重要ポイントがあります。それは「時効で消滅した債権」についてです。
原則として、時効で消えてしまった債権は請求できません。しかし、「時効によって消滅する前に、相殺適状(相殺できる状態)になっていた場合」に限り、その債権者は相殺をすることができます。
「あの時チャラにしておけばよかった」という公平な期待を守るためのルールです。時効の基本的な仕組みについては、こちらの記事で復習しておくと理解が深まります。
宅建試験で最も狙われるのが、「要件は満たしているけど、特別に相殺が禁止されるケース」です。以下のパターンは、理屈抜きで覚えておきたい重要ポイントです。
これは非常に重要です。例えば、AさんがBさんを殴ってケガをさせたとします。AさんはBさんに治療費などの損害賠償を払う義務があります(悪意による不法行為)。この時、AさんがたまたまBさんにお金を貸していたとしても、Aさん(加害者)の方から「貸してる金と治療費で相殺しようぜ」と言うことはできません。
もしこれが許されると、お金を貸している人が「どうせ相殺できるから殴ってやろう」と考える危険があるからです。ただし、被害者(Bさん)の方から「相殺しましょう」と言うことは可能です。
給料の一部など、生活のために必要な「差押えが禁止されている債権」を、無理やり相殺で奪うことはできません。相手の生活権を守るためのルールですね。
第三者から債権が「差押え」られた場合、その後に取得した債権を使って相殺することは原則できません。「差押え」と「相殺」の優劣については、少し細かい論点になりますが、「差押えの前に持っていた債権なら相殺できる(対抗できる)」という点は覚えておくと安心です。
相手が「あなたがやるまで私もやりません」と言える権利(抗弁権)を持っている場合、こちらから一方的に相殺することはできません。これを認めてしまうと、相手の「同時履行の抗弁権」を勝手に奪うことになってしまうからです。
同時履行の抗弁権の「せーの!」のルールについては、こちらでわかりやすく解説していますので、あわせて確認しておきましょう。
相殺の分野は、「誰が」「どの債権を」持っているかを整理すれば、パズルのように解けるようになります。最後に、今日覚えるべきポイントを整理しました。
- 自働債権=言い出しっぺの債権。弁済期が来ていないとダメ。
- 受働債権=相手の債権。弁済期前でもOK。
- 時効消滅した債権も、消滅前に要件を満たしていれば相殺できる。
- 不法行為(悪意・生命身体侵害)の場合、加害者からの相殺はできない(被害者からはOK)。
まずは「自働」と「受働」の言葉に慣れることから始めてみてください。一つひとつ理解を積み重ねていけば、必ず得点源になります。焦らず、コツコツ進めていきましょう!
