【宅建民法】タダでも責任あり?「負担付贈与」と「死因贈与」の試験に出るポイントを解説

【宅建民法】タダでも責任あり?「負担付贈与」と「死因贈与」の試験に出るポイントを解説 宅建

こんにちは。宅建試験の勉強、順調に進んでいますか?民法の勉強をしていると、「売買」や「賃貸借」といったお金が動く契約の話が多くて、少し堅苦しく感じることもあるかもしれません。

でも、今回解説するテーマは「贈与契約」。つまり、プレゼントの話です。

「誕生日プレゼント」や「実家からの仕送り」など、私たちの生活に身近な「あげる・もらう」という行為も、法律の世界では立派な契約の一つです。「タダであげるんだから、トラブルなんて起きないでしょ?」と思うかもしれませんが、実は試験では「やっぱりあげるのをやめたい!」となった時のルールがよく狙われます。

今回は、そんな贈与契約について、初学者が間違えやすいポイントに絞って優しく解説していきます。

「書面」か「口頭」かで運命が変わる!贈与の解除ルール

贈与契約で一番大切なのは、「口約束なのか、ちゃんと書面に残したのか」という点です。ここが、試験での勝負の分かれ目になります。

法律の世界では、基本的に「口約束でも契約は成立する」というのが民法の基礎的な考え方ですが、贈与に関しては少し特殊なルールがあるのです。

1. 書面によらない贈与(口約束)の場合

「その時計、君にあげるよ」と口頭で言っただけのケースです。この場合、「履行(りこう)が終わる前」であれば、いつでも、どちらからでも一方的に解除(撤回)することができます。

「やっぱりあげるのやめた!」と気軽に言えるわけですね。人間、その場のノリで「あげるよ」と言ってしまうこともありますから、書面にしていない程度の軽い約束なら、引き返せるようにしてあるのです。

ただし、注意点があります。「すでに履行が終わった部分」については、もう解除できません。

例えば、親が「毎月5万円仕送りするよ」と言って、実際に1年間(60万円分)送金したとします。その後、親子喧嘩をして「仕送りはやめる!これまでの60万円も返せ!」と言うのは通用しません。これからの分をストップすることはできますが、すでに渡してしまったものは取り返せない、と覚えておきましょう。

2. 書面による贈与の場合

一方で、契約書などの「書面」を作成して「あげます」と約束した場合はどうでしょうか。この場合、各当事者が勝手に解除することはできなくなります。

書面に残すということは、それだけ「本気であげるつもりだ」という証拠です。たとえまだ物を渡していなくても、書面がある以上、「やっぱりやめた」は通用しません。解除するには、相手方の合意が必要になります。

「紙一枚あるかどうか」で、拘束力が天と地ほど変わることを意識しておいてください。

タダでも責任はある?「負担付贈与」の注意点

次に試験でよく出るのが、ただのプレゼントではなく、条件がついた「負担付贈与」です。

例えば、「私の老後の面倒を見てくれるなら、この土地をあげるよ」というようなケースです。もらう側(受贈者)にも、「面倒を見る」という負担(義務)がありますよね。

負担の分だけ「売主」と同じ責任を負う

普通の贈与であれば、あげる側(贈与者)は責任をあまり負いません。「特定した時の状態で」渡せばいいので、もし建物が雨漏りしていても、そのまま渡せばOKです(タダですからね)。

しかし、負担付贈与は違います。もらう側も負担を負っている以上、実質的には「交換」や「売買」に近くなります。

そのため、負担付贈与の贈与者は、その負担の限度において、売主と同じ「担保責任(契約不適合責任)」を負うことになります。

もし土地に何か欠陥(地中埋設物など)があった場合、普通の贈与なら「知らんぷり」できても、負担付贈与の場合は責任を取らなければならない可能性があるのです。この「売主と同じ責任」というフレーズは、宅建試験の契約不適合責任の分野ともリンクしてくるので、合わせてイメージしておくと理解が深まります。

ちなみに、「負担付」ではない普通の贈与でも、「欠陥のない完全なものをあげます!」と約束していた場合は別です。約束を破ったことになるので、債務不履行として損害賠償責任を負うことになりますよ。
「死んだらあげる」はどうなる?特殊な贈与の終了

最後に、少し変わった贈与のパターンを2つ紹介します。これらも「いつ契約が終わるのか?」という視点で整理すると覚えやすいですよ。

定期贈与:死亡したらストップ

「毎月5万円あげる」のように、定期的に給付をする贈与です。これは、「贈与者」または「受贈者」のどちらかが死亡した時点で、効力を失います(終了します)。

「親が死んだら、その子供(相続人)が仕送り義務を引き継ぐの?」とか、「もらう子が死んだら、孫がもらえるの?」といった疑問が湧くかもしれませんが、答えはNOです。定期贈与は、その人同士の関係性で成り立っているものなので、どちらかが亡くなればそこで終わりです。

死因贈与:いつでも撤回OK

「私が死んだら、この家をあげるよ」という契約です。これは「贈与」という名前ですが、実質的には「遺言」に近いため、「遺贈」のルールが適用(準用)されます。

ここで重要なのは、「書面で契約していても、後で撤回できる」という点です。

先ほど、「書面による贈与は撤回できない」と説明しましたが、死因贈与は例外です。遺言書を何度でも書き直せるのと同じで、死因贈与も「やっぱりやめた」と撤回することが認められています。この「書面の例外」はひっかけ問題として出しやすいので、注意していきましょう。

まとめ:今日覚えるべき3つのポイント

贈与契約は、登場人物の関係やシチュエーションを想像すると理解しやすい分野です。深入りしすぎず、以下の重要ポイントをしっかり押さえておきましょう。

ポイント
  • 書面のない贈与は「履行前」なら解除できるが、書面のある贈与は一方的に解除できない。
  • 「負担付贈与」の場合、贈与者は負担の分だけ売主と同じ責任(契約不適合責任)を負う。
  • 「死因贈与」は遺贈のルールを使うため、書面があってもいつでも撤回できる。

「タダであげる」という単純な話でも、法律が絡むと意外と細かいルールがありましたね。でも、基本は「軽はずみな約束(口頭)はやり直せるけど、本気(書面)は守りなさい」という常識的な感覚がベースになっています。

焦らず一つずつ、知識を自分のものにしていってくださいね。