【宅建民法】抵当権と相殺の勝ち負けは?「タイミング」さえ掴めば一発で解ける!

【宅建民法】抵当権と相殺の勝ち負けは?「タイミング」さえ掴めば一発で解ける! 宅建

こんにちは。宅建試験の勉強、毎日お疲れ様です。

民法の勉強を進めていくと、「Aさん、Bさん、Cさん」が登場して、誰が誰に対して何を主張できるのか、混乱してしまうことってありませんか?

特に「抵当権」と「相殺」が組み合わさった問題は、状況をイメージしづらく、苦手意識を持つ方がとても多い分野です。

「差押え? 相殺? どっちが勝つの?」と頭を抱えてしまうその気持ち、痛いほどよく分かります。私自身も学習当初は、この分野の問題文を見るだけで「うっ」となっていました。

でも、安心してください。この論点は、実は「あるひとつのタイミング」に注目するだけで、驚くほど簡単に正解が出せるようになるんです。

今回は、複雑に見える「抵当権に基づく物上代位(差押え)と相殺」の関係について、初学者の方でもスッキリ理解できるように解説していきます。

法律用語に振り回されず、ストーリーで理解して、得点源に変えていきましょう!

抵当権者 VS 賃借人! そもそも何が揉めているの?

まずは、今回解説するトラブルが「どんな状況なのか」を整理しましょう。登場人物と状況が整理できれば、解決の糸口が見えてきます。

いきなり法律用語で考えようとせず、まずは具体的なストーリーでイメージを作ることが大切ですよ。

3人の登場人物と関係性

今回の主役は以下の3人です。

ポイント
  • Aさん(オーナー): 建物の持ち主。C銀行からお金を借りて、建物に抵当権を設定しました。Bさんに建物を貸しています。
  • Bさん(借りてる人): Aさんの建物を借りていて、Aさんに毎月「家賃」を払う義務があります。一方で、Aさんにお金を貸しており、「Aさんに対する貸金債権」も持っています。
  • C銀行(抵当権者): Aさんにお金を貸しており、その担保として建物に抵当権を持っています。

この状況で、AさんがC銀行への借金返済を滞納してしまいました。

困ったC銀行は、抵当権を実行しようとしますが、競売にかける前に「AさんがBさんから受け取るはずの家賃」に目を付けます。

「Aさんは借金を返さないんだから、代わりにBさんが払う家賃を私(C)に直接よこしなさい!」

これが、抵当権に基づく「物上代位による差押え」です。

家賃を差し押さえられたBさんは、たまったもんじゃありませんね。「私もAさんにお金を貸してるんだから、家賃とチャラ(相殺)にさせてよ!」と言いたくなります。

争いのポイントは「相殺できるか」どうか

ここで問題になるのが、Bさんの言い分です。

BさんはAさんに対して「貸金債権(お金を返してもらう権利)」を持っています。本来であれば、BさんはAさんに対して、「家賃」と「貸金」を相殺(チャラにする)して、現金を払わずに済ませることができます。

しかし、C銀行が「その家賃は私が差し押さえた!」と言ってきました。このとき、C銀行の「差押え」が勝つのか、Bさんの「相殺」が勝つのか、というのが今回のテーマです。

この「どっちが勝つか」という議論は、民法では「対抗関係」と呼ばれたりします。「対抗する」といった法律用語の基礎イメージを持っておくと、この先の理解がさらにスムーズになりますよ。

勝敗の分かれ目は「タイミング」だけ!

では、C銀行(抵当権者)とBさん(相殺を主張したい人)、どちらが勝つのでしょうか?

結論から言うと、「Bさんが、Aさんへの債権(反対債権)をいつ手に入れたか」ですべてが決まります。

ここが試験で最も狙われるポイントですので、しっかり押さえていきましょう。

1. 抵当権設定「前」に債権を取得していた場合

まず、C銀行が抵当権を設定するよりも「前」に、BさんがAさんにお金を貸していた(債権を取得していた)場合です。

この場合、Bさんの勝ち(相殺できる)となります。

理由はシンプルです。Bさんは、C銀行が登場する前から「いざとなったら、この貸金と家賃を相殺すればいいや」という期待(担保的機能への期待)を持っていました。後から出てきたC銀行の都合で、その正当な期待を奪うのはかわいそうですよね。

ですから、たとえC銀行が家賃を差し押さえたとしても、Bさんは「いやいや、私は前から相殺するつもりでしたから!」と主張して、支払いを拒否することができます。

2. 抵当権設定「後」に債権を取得した場合

次に、C銀行が抵当権を設定した「後」に、BさんがAさんにお金を貸した場合です。

この場合、C銀行の勝ち(相殺できない)となります。

抵当権が設定され、登記されると、それは世の中に「この建物はC銀行の担保に入っていますよ」と公表されている状態です。Bさんは、そのことを知ることができる状態で、あとからAさんにお金を貸しました。

この場合、「いざとなったら家賃と相殺しよう」というBさんの期待よりも、先に登記をしているC銀行の権利(抵当権)の方が優先されます。

もし、後から債権を持った人が自由に相殺できてしまったら、C銀行は担保として当てにしていた家賃を回収できなくなってしまいますよね。相殺が禁止されるケースにはいくつかパターンがありますが、この「抵当権との優劣」も非常に重要なルールのひとつです。

したがって、このケースではBさんは相殺を主張できず、C銀行に家賃を支払わなければなりません(二重払いになるわけではなく、家賃をCに払い、Aへの貸金は別途Aに請求することになります)。

ちなみに、この「誰が先に権利を持ったか」で決まる考え方は、債権譲渡の場面での相殺のルールともよく似ています。あわせて確認しておくと、知識がリンクして覚えやすくなりますよ。

試験でのひっかけパターンに注意!

基本的なルールは「タイミング」ですが、試験では少し言葉を変えて出題されることがあります。落ち着いて対応できるように、典型的なパターンを知っておきましょう。

「差押え」の前後ではないことに注意

よくある間違いが、基準時を「差押えの時」と勘違いしてしまうことです。

ポイント
  • × 差押えの前に債権を取得していれば相殺できる
  • ○ 抵当権設定登記の前に債権を取得していれば相殺できる

C銀行が「差押え」をしたタイミングではなく、もっと前の「抵当権を設定(登記)したタイミング」が基準になります。差押え自体はずっと後に行われる行為ですが、勝負の判定は「抵当権が生まれたとき」に遡るイメージを持ちましょう。

問題文を読むときは、必ず時系列をメモして、「Bさんの債権取得」と「抵当権設定登記」のどっちが先かを確認する癖をつけてくださいね。

まとめ:今日の「これだけ覚えよう」

抵当権に基づく物上代位と相殺の関係、少しスッキリしましたでしょうか?難しく考えすぎず、シンプルに「早い者勝ち」のルールで整理するのが合格への近道です。

最後に、今日の重要ポイントをまとめます。

ポイント
  • 争点は、家賃を「C銀行に払う」か、「Aへの貸金と相殺する」か。
  • 判定基準は「抵当権設定登記」のタイミング。
  • 抵当権設定よりに反対債権(貸金債権)を取得していれば、相殺できる(Bの勝ち)
  • 抵当権設定よりに反対債権を取得した場合は、相殺できない(Cの勝ち)
  • 「差押えの前後」ではなく「抵当権設定の前後」で判断すること!

民法は「なぜそういうルールなのか」という理由を知ると、暗記量がぐっと減ります。今日の知識は、そのまま得点に直結する重要論点です。ぜひ、ご自身の言葉で「こういう場合はこっちが勝つ!」と説明できるまで復習してみてくださいね。

一歩ずつ、確実に知識を積み重ねていきましょう。応援しています!