こんにちは。宅建試験の勉強、順調に進んでいますか?権利関係や宅建業法が一通り終わって、「法令上の制限」に入ると、急に聞き慣れない言葉が増えて戸惑ってしまうこと、ありますよね。特に都市計画法は、漢字ばかりの用語が並んでいて、「何から覚えればいいの?」と途方に暮れてしまう方も多いはずです。
私自身も受験生時代、この分野には随分と苦しめられました。テキストを読んでも、街づくりのイメージが湧かなくて、ただの文字の羅列に見えてしまっていたんです。でも、都市計画法は「街づくりのルールブック」です。どんな手順で、どんな目的で街を作っていくのか、その「流れ」さえ掴んでしまえば、実はとても論理的で面白い分野なんですよ。
そこで今回は、都市計画法の全体像である「基本構造」について、初学者の方でもイメージしやすいように解説していきます。覚えることが多い分野なので、今回はまずその第一歩として、全体の流れと「場所決め」の話を中心に見ていきましょう。
都市計画法を勉強するとき、いきなり細かい「用途地域」や「開発許可」の暗記から入るのはおすすめしません。まずは、法律全体がどのような順序で街づくりを進めようとしているのか、大きな地図を手に入れることが大切です。
都市計画法は、大きく分けると以下の3つのステップで構成されています。
料理に例えるとわかりやすいですよ。
①「どこのキッチンで作るか決める(場所)」
②「どんなメニューを作るか決める(計画)」
③「実際に調理する(実現)」という流れです。
まず最初に、「日本の国土のどこで、計画的な街づくりをするか」を決めなければなりません。日本全国すべての土地で細かい計画を立てるわけではありません。人が多く住んでいる場所や、これから発展しそうな場所を選んで、そこを「都市計画区域」として指定します。これが、街づくりの舞台となる「エリア決め」です。
場所が決まったら、その中で「ここは住宅地にしよう」「ここは自然を残そう」といった具体的なプラン(メニュー)を決めます。これを「都市計画」といいます。例えば、市街化区域と市街化調整区域に分けたり、商業地域や住居地域といった用途地域を決めたりします。
プランが決まったら、それを実現するために動きます。これには2つの方向性があります。
- 都市施設の整備:道路、公園、下水道などのインフラを作ること。
- 都市計画制限:勝手な建築を禁止したり、建物の高さを制限したりして、プラン通りの街になるよう規制すること。
この「場所決め」→「プラン決め」→「実行」という3段階の流れを、まずは頭の中にしっかりと置いてくださいね。
では、ここからは試験でよく問われる重要ポイントに入っていきましょう。最初のステップである「都市計画区域」(場所決め)についてです。
「都市計画区域」って、具体的にはどういう場所が選ばれるんですか?
良い質問ですね。法律では、「一体の都市として総合的に整備し、開発し、及び保全する必要がある区域」と定義されています。例えば、ある地方のA県北部に広がる湿地帯があったとします。これまでは何もなかった場所ですが、新幹線の駅ができて都心へのアクセスが良くなると、放っておけば勝手に家や工場がポツポツと建ち始めます(スプロール現象といいます)。
こうなると、道路も下水道もめちゃくちゃになってしまいますよね。そこで、県が「ここはこれから計画的に街づくりをするぞ!」と宣言して、網をかけるわけです。これが都市計画区域の指定です。
ここが宅建試験の最初の暗記ポイントです。都市計画区域は誰が指定するのでしょうか。
原則として、行政区画(市町村の境界)にとらわれず指定できるのですが、指定する人は広さに応じて決まっています。
| 区域の広がり | 指定する人(指定権者) |
|---|---|
| ひとつの都道府県の中にある場合 | 都道府県 |
| 2つ以上の都府県にまたがる場合 | 国土交通大臣 |
基本は「都道府県」ですが、県境をまたぐような大きなエリアの場合は、国(大臣)が出てくるという点を覚えておきましょう。「市町村」ではない点に注意してくださいね。
法律の条文にも少しずつ慣れていきましょう。試験問題は条文の表現を使って出題されることが多いからです。
ここで重要なのは、「必要があるときは、当該市町村の区域外にわたり指定できる」という点です。つまり、行政の境界線(〇〇市のライン)と、都市計画のラインは必ずしも一致しなくていいということです。街の発展は市境で止まるわけではありませんからね。
さて、都市計画区域の外側はどうなるのでしょうか?基本的には「田舎」や「山林」などで、厳しい規制をする必要がない場所です。しかし、中には例外があります。
例えば、都市計画区域からは外れているけれど、高速道路のインターチェンジが新しくできた場所を想像してください。そこだけ急に物流センターやお店ができたりして、乱開発が進む可能性がありますよね。そのまま放置すると、将来本格的に街づくりをしたくなった時に困ってしまいます。
そこで指定されるのが「準都市計画区域」です。
準都市計画区域は、積極的な街づくりをするわけではありませんが、「これ以上無秩序にならないように、最低限の規制だけかけておこう」という予防的なエリアです。あくまで「現状維持・保全」が目的なので、都市計画区域のようにガッツリとインフラ整備をするわけではありません。
ここは試験で非常によく狙われる引っ掛けポイントです。準都市計画区域は「ゆるい規制」のエリアなので、厳しいルールは適用できません。
【定めることができるもの】(最低限のルール)
- 用途地域(ここは工場ダメ、など)
- 風致地区(景色を守る)
- 高度地区(高さを制限する) など
【定めることができないもの】(積極的な街づくりのルール)
- 区域区分(市街化区域・市街化調整区域の区分け)
- 市街地開発事業(土地区画整理事業など)
- 高度利用地区(もっと土地を有効活用しよう!という地区)
特に「区域区分」を定められない、というのは超重要です!準都市計画区域は、そもそも都市計画区域の外にあるので、「市街化区域」や「調整区域」といった区分けの概念が存在しないんです。
今回は都市計画法の「入り口」として、全体像と区域の指定について解説しました。初めて聞く言葉も多かったかもしれませんが、まずはざっくりとしたイメージを持つことが大切です。
試験対策として、今日の記事で最低限持ち帰ってほしいポイントは以下の3点です。
- 3ステップを理解する:「区域指定」→「計画決定」→「事業実施」の流れ。
- 指定権者を区別する:都市計画区域の指定は、原則「都道府県」、県またぎは「国土交通大臣」。市町村ではない!
- 準都市計画区域の特徴:都市計画区域外の乱開発防止エリア。「区域区分」は定められないことを暗記!
都市計画法は、この土台の上に「地域地区」や「開発許可」といった知識を積み上げていくことになります。土台がしっかりしていれば、あとの知識もスムーズに入ってきますよ。次回は、ステップ②の「都市計画の内容(区域区分や用途地域)」について、さらに詳しく掘り下げていきます。
焦らず一つひとつ、確実に知識を定着させていきましょう。応援しています!

