こんにちは!宅建試験の勉強、順調に進んでいますか?
民法の勉強をしていると、「契約を結んだはいいけれど、やっぱりやめたいときはどうなるの?」という疑問にぶつかることがありますよね。日常生活でも、買った商品を返品したり、予約をキャンセルしたりすることはありますが、宅建試験で扱う不動産の取引となると、もう少しルールが厳格になります。
今日は、そんな「契約解除」についてお話しします。
「解除」という言葉だけ聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、要は「約束破りがあったから、契約を白紙に戻す」という話です。試験では、どんな時に解除できるのか、解除したらどうなるのか、第三者が出てきたらどうするのか、といったポイントがよく問われます。
私自身も最初は「催告(さいこく)」という言葉の意味すら分からず苦労しましたが、一つひとつイメージを掴めば必ず解けるようになります。焦らず、一緒に整理していきましょう。
まず、契約解除の入り口として「どうやったら契約を解除できるのか」という手続きの話から見ていきましょう。
契約解除の多くは、相手が約束を守ってくれないこと(債務不履行)が原因で起こります。例えば、「家を買ったのにお金を払ってくれない」「お金を払ったのに家を引き渡してくれない」といったケースです。
債務不履行=約束破り!宅建試験で頻出の「損害賠償」と「解除」のルールの記事でも触れていますが、相手が約束を破ったからといって、いきなり「はい、解除!」と言えるわけではありません。
相手が単に遅れているだけ(履行遅滞)の場合、まだ約束を果たせる可能性があります。いきなり契約を切るのは少し酷ですよね。
そこで、原則としては「相当の期間を定めて催告(さいこく)」をし、その期間内に履行がない場合に初めて解除できることになっています。
「催告」というのは、「〇〇日までにちゃんとしてくださいね!」と相手にラストチャンスを与えることだと思ってください。これを「催告解除」と呼びます。
一方で、「ラストチャンスを与える意味がない」状況であれば、催告なしで直ちに解除することができます。これを「無催告解除」と言います。
試験で問われやすいのは、具体的にどんな時か?という点です。
これらの場合は、「待っていても無駄」なので、すぐに解除できます。特に「定期行為」は言葉の意味を問われることがあるので、成人式の例やクリスマスケーキの例などでイメージしておくと覚えやすいですよ。
では、無事に(?)契約解除ができたとしましょう。解除をすると、その契約はどうなるのでしょうか。
ここでのポイントは、「契約は初めからなかったことになる(遡及効)」ということです。
契約がなかったことになるので、お互いに受け取ったものを返さなければなりません。これを「原状回復義務」と呼びます。
ここまではイメージしやすいと思いますが、試験で狙われるのは「お金を返すとき」のルールです。
もし金銭を受領していた場合、それを受け取った時からの「利息」を付けて返還しなければなりません。
単に預かっていたお金をそのまま返すだけでなく、「そのお金を使えた期間の利益(利息)」も上乗せして返す必要があるのです。ここがひっかけ問題として出やすいので、「金銭返還には利息をつける」とセットで覚えておきましょう。
ちなみに、契約解除によって損害が発生している場合は、原状回復とは別に損害賠償請求も併せて行うことができます。「解除したんだから損害賠償はできない」という選択肢が出たら、それは間違いですので注意してくださいね。
さて、ここからが本日の山場です。契約解除の論点で、初学者が一番混乱しやすいのが「第三者」との関係です。
例えば、こんな事例を想像してみてください。
この時、土地はAさんのものに戻るのでしょうか? それともCさんのものになるのでしょうか?
結論から言うと、第三者Cが「登記」を備えていれば、Cは保護されます(土地はCのものになります)。
ここで非常に重要なのが、Cさんが「善意(事情を知らなかった)」か「悪意(事情を知っていた)」かは関係ないという点です。
宅建民法の基礎!「善意・悪意」や「対抗する」など頻出の法律用語をわかりやすく解説の記事でも解説していますが、民法では「善意か悪意か」で結論が変わることがよくあります。
しかし、解除前の第三者に関しては、「善意・悪意を問わず、登記があれば勝つ」というシンプルなルールになっています。これは、解除されるような不安定な権利関係であっても、登記という公的な手続きを経た第三者を取引の安全のために守ろうとする考え方があるからです。
この「善意悪意関係なく登記で決まる」というルールは、他の分野と混同しやすいので注意が必要です。特によく比較されるのが「詐欺による取消し」です。
【宅建】「詐欺」は無効じゃない?取消しの重要ルールと第三者対抗を解説!の記事にもあるように、詐欺の場合は、取消し前の第三者が保護されるためには「善意でかつ無過失」などの要件が必要になることがありますが、解除の場合はもっとシンプルです。
試験中に「あれ? どっちだっけ?」と迷わないように、「解除前の第三者は、善意・悪意関係なく、登記があれば保護される!」と口に出して覚えてしまいましょう。
最後に、少し細かいけれど試験に出るポイント、「解除権の不可分性」について触れておきます。
契約の当事者が複数人いる場合、例えば「売主がA・B・Cの3人、買主がD」というケースです。
この場合、契約を解除するにはどうすればいいでしょうか?Aさんだけが「俺は解除する!」と言ってもダメなのです。
ルールは「全員から、または全員に対して」行わなければなりません。
これを「解除権の不可分性」と言います。契約関係がバラバラにならないように、やるなら全員で一斉にやる、というのが原則です。
ただし、ここで一つだけ重要な例外があります。これが少しややこしいのですが、「共有物を貸している場合の賃貸借契約の解除」です。
判例では、共有物の賃貸借契約を解除することは、全員の合意が必要な「変更行為」ではなく、「管理行為」とみなされます。
そのため、この場合に限っては「共有者の持分の過半数」で決定できるとされています。全員の同意がなくても、持分をたくさん持っている人たちの決定で解除ができるのです。
基本は「全員から全員へ」ですが、この「共有物の賃貸借」だけは例外として頭の片隅に置いておいてくださいね。
契約解除の分野は、覚えることが少し多いように感じるかもしれませんが、ポイントを絞れば怖くありません。
今日の記事で特に覚えて帰ってほしいのは、以下の5点です。
特に「第三者の保護」の条件は、過去問でも繰り返し問われている超重要ポイントです。
一度で完璧に覚えられなくても大丈夫です。「登記があれば勝てるんだな」というイメージを持っておくだけで、問題文を読んだ時の安心感が変わってきますよ。少しずつ知識を積み重ねて、合格に近づいていきましょう!
