詐欺は取消し?公序良俗は無効?宅建試験で狙われる「契約の効力」をスッキリ整理

詐欺は取消し?公序良俗は無効?宅建試験で狙われる「契約の効力」をスッキリ整理 宅建

こんにちは。宅建試験の勉強、順調に進んでいますか?

法律の勉強を始めると、日常生活では同じような意味で使っている言葉が、実はまったく別の意味を持っていて驚くことがありますよね。

その代表例が、今回のテーマである「無効」と「取消し」です。

普段の会話なら、「そのチケットは無効だよ」と言っても「その予約は取り消したよ」と言っても、結果として「使えない」という意味では同じかもしれません。

しかし、宅建試験(民法)の世界では、この2つは似て非なるものです。ここをあやふやにしたまま進むと、後で学習する「代理」や「未成年者」の単元で混乱してしまいます。

私自身も最初は「どっちもダメになるんだから同じじゃないの?」と思っていました。でも、その「ダメになり方」の違いこそが、試験で狙われるポイントなのです。

この記事では、初学者がつまずきやすい「無効と取消しの決定的な違い」について、具体的なイメージを交えながら解説していきます。今日でこの分野を得点源に変えてしまいましょう。

そもそも「無効」と「取消し」は何が違う?まずはイメージを掴もう

まず、一番大切な「イメージ」の違いからお話しします。

結論から言うと、以下のように捉えてください。

ポイント
  • 無効:最初から何もない。ノーカウント。
  • 取消し:とりあえず有効だけど、あとで「ナシ!」にできる。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

「無効」は最初から空っぽ

無効とは、契約をしたとしても、最初からまったく効力が生じていない状態を指します。

わかりやすい例として、よく試験やテキストで登場するのが「公序良俗(こうじょりょうぞく)に反する契約」です。

例えば、「Aさんを殺してくれたら1,000万円あげるよ!」という殺人契約をしたとします。こんな契約、社会のルールとして認められませんよね。

これが「無効」です。契約書にハンコを押そうが何をしようが、法律上は「最初からそんな契約は存在しない」ものとして扱われます。

そのため、無効には以下の大きな特徴があります。

ポイント
  • 誰でも主張できる(当事者以外でもOK)
  • いつでも主張できる(時間の制限がない)

「最初から存在しない」のですから、10年経とうが100年経とうが、無効なものは無効です。「時間が経ったから殺人の契約が有効になる」なんてことはあり得ませんよね。

「取消し」は“とりあえず有効”?試験に出る遡及効の仕組み

一方で、「取消し」は少し複雑です。

取消しとは、「いったんは有効に成立した契約」を、あとから「やっぱりナシにする」ことを言います。

典型的な例は「詐欺(さぎ)」です。

例えば、あなたが騙されて壺を買わされたとします。この契約は、騙されたとはいえ、ハンコを押して契約した時点では「一応有効」です。しかし、あとで騙されたことに気づいたら、「詐欺だったから取り消します!」と言えますよね。

ここで非常に重要なのが、取り消した瞬間にどうなるか、という点です。

時間を巻き戻す「遡及効(そきゅうこう)」

「取消し」をすると、契約の時点まで時間を巻き戻して、「初めから無効だった」ということにします。

これを法律用語で「遡及効(そきゅうこう)」と呼びます。「さかのぼって効力をなくす」という意味です。

ちなみに、宅建業法で学習するクーリング・オフも、広い意味では「契約を白紙に戻す」という点で似たような効果を持っていますが、民法の「取消し」は原因(詐欺や脅迫など)が必要な点が異なります。

宅建の合否を分ける!「時効」と「追認」のルールを整理

「無効」と「取消し」の最大の違いであり、試験で最もひっかけ問題として出されやすいのが「期間制限」と「追認(ついにん)」です。

ここさえ整理できれば、この分野の問題は怖くありません。

取消しには「期限」がある

先ほど、「無効」はいつでも主張できると言いました。しかし、「取消し」はずっとできるわけではありません。

いつまでも「取り消すか、どうしようか…」と迷われていると、相手方も困ってしまいますよね。そこで、以下の期間制限(時効)が設けられています。

5年という数字は必ず覚えましょう。5年経ってしまうと、たとえ詐欺だったとしても、もう取り消すことはできず、契約は完全に有効なものとして確定してしまいます。

「追認」とは、有効確定宣言のこと

聞き慣れない言葉ですが、「追認(ついにん)」も頻出キーワードです。

字の通り「追って認める」こと。つまり、「騙されたけど、この壺気に入ったから、このまま買うよ!」と宣言することです。

「取消し」と「追認」はセットで覚えておきましょう。

ポイント
  • 取消し:契約を白紙に戻す(ナシにする)
  • 追認:契約を有効なものとして確定させる(アリにする)

一度「追認」すると、もう二度と取り消すことはできません。「やっぱり取り消す」はナシです。ちなみに、この追認ができるのは「取消権者(騙された人など)」だけで、詐欺を働いた相手方からはできません。

また、契約したモノ自体に欠陥があった場合などは、詐欺による取消しとは別に契約不適合責任の問題になることもあります。まずは「契約自体の効力」の話として、この追認のルールをしっかり押さえましょう。

まとめ:今日は「5年」という数字だけは持ち帰ろう

今回は、少しややこしい「無効」と「取消し」の違いについて解説しました。

細かい条文を暗記する前に、まずはざっくりとしたイメージを持つことが大切です。最後に、今日覚えるべきポイントを整理します。

ポイント
  • 無効:最初からゼロ。誰でも、いつでも主張できる。
  • 取消し:一応有効だけど、あとから「初めから無効」にできる(遡及効)。
  • 期間制限:取消しは「追認できる時から5年」で消滅する。
  • 追認:有効であることを確定させること。一度追認したら取り消せない。

特に「5年」という数字は試験によく出ます。勉強の合間の休憩時間などに、「取消しは5年、無効はずっと」と頭の中で唱えてみてください。

この基礎知識は、この先の民法学習の土台になります。焦らず一つずつ、知識を積み上げていきましょう。