重要事項説明書の急所!「売買」と「貸借」の違いをマスターして得点源に!

重要事項説明書の急所!「売買」と「貸借」の違いをマスターして得点源に! 宅建

こんにちは! 以前の記事で、「重要事項説明(35条書面)」がいかに大切か、そしてその全体像についてお話ししましたね。みなさん、勉強の進み具合はいかがでしょうか?

前回の記事で「重説」の大枠は分かったけど、具体的な記載事項が多すぎて覚えきれません……。全部丸暗記しないとダメなんですか?
その気持ち、痛いほどわかります!私も受験生時代、テキストの表を見て「これ全部覚えるの!?」と絶望した記憶があります。でも、安心してください。全部を「丸暗記」する必要はないんです。

今回は、重要事項説明書(35条書面)の具体的な記載事項について、少し深掘りして解説していきます。ただ羅列するのではなく、「なぜそれが必要なのか」「試験ではどう問われるか」という視点で整理しますので、肩の力を抜いて読んでみてくださいね。

記載事項が「多い」のには理由がある

重要事項説明書に書くべき内容は多岐にわたりますが、まずは大きく分類してイメージを持ちましょう。不動産取引はとても高額ですよね。買った後に「こんなはずじゃなかった!」とならないように、あらかじめ伝えておくべき「リスク」や「ルール」が記載事項の正体です。

1. 物件そのものの基本情報

まずは、その物件が誰のもので、どんな状態なのかという基本情報です。

ポイント
  • 登記簿上の権利:所有者は誰か、抵当権(借金のカタ)がついているかなど。これは基本中の基本ですね。
  • ライフラインの整備状況:水道・電気・ガス・排水施設がちゃんと整備されているか。まだの場合は、いつ整備されて、いくら負担金がかかるのか。これは「売買」でも「貸借」でも、生活に直結するので必須です。
  • 未完成物件の場合の形状・構造:まだ建物ができていない場合、完成したらどうなるのか(図面など)を説明します。実物が見られないからこそ重要ですね。
2. お金に関する取り決め

トラブルになりやすい「お金」の話も、契約前にしっかり説明します。

ポイント
  • 代金・借賃「以外」に授受される金銭:手付金や敷金など、物件価格以外に動くお金の「額」と「目的」。
  • 契約の解除・損害賠償・違約金:もし契約をやめたい時はどうするか、違反したら幾ら払うか。
  • 手付金等の保全措置:宅建業者が倒産しても手付金が戻ってくる仕組みがあるかどうか(50万円未満などの例外を除く)。
  • 支払金・預り金の保全措置:これは手付金以外の金銭についても、保全措置(守る仕組み)を行うかどうかです。
試験の合否を分ける「売買」と「貸借」の違い

ここからが今日一番の山場であり、試験によく出るポイントです。実は、重要事項説明の内容は、「売買・交換」なのか「貸借(賃貸)」なのかによって、説明すべき項目が変わるのです。

なぜなら、買う人(オーナーになる人)と、借りる人(一時的に住む人)では、知っておくべき情報の重みが違うからです。

「法令上の制限」の落とし穴

都市計画法や建築基準法などの「法令上の制限」は、とてもややこしいですよね。

例えば、「建ぺい率」や「容積率」。これは「その土地にどれくらいの大きさの建物が建てられるか」というルールです。

ポイント
  • 売買の場合:買った後に建て替えをするかもしれないので、説明が必要です。
  • 建物の貸借の場合:アパートを借りる人は、そこを建て替えることはありませんよね。ですから、説明は不要です。
「私道負担」について

敷地に接する道路が私道(個人の持ち物)で、その負担金がある場合の説明です。

ポイント
  • 売買・宅地の貸借:説明が必要です。
  • 建物の貸借:アパートの一室を借りるだけの人は、私道の権利関係や負担金まで気にする必要は薄いため、説明不要とされています。
マンション(区分所有建物)特有の記載事項

近年、宅建試験で非常によく問われるのが「マンション」に関する説明事項です。マンションはみんなで住む場所なので、独自のルール(規約)やお金(管理費・修繕積立金)の話がとても重要になります。

ここは「建物の貸借(賃貸)」の場合に、説明が省略できるかどうかで整理するのがコツです。

項目 売買 貸借 ポイント
敷地に関する権利の種類・内容 借りる人も「敷地を使っていい権限」があるか知る必要がある
共用部分に関する規約 廊下やエントランスの使い方。借りる人も使うので説明必須
専有部分の用途制限 「ペット不可」「事務所不可」など。借りる人にとって最重要!
修繕積立金・管理費用の額 × ここが狙われます! 借りる人は家賃や共益費を払うだけで、オーナーが払う積立金の額は関係ない
管理の委託先(氏名・住所) 水漏れなどのトラブル時、どこに連絡するかは借りる人も知りたい
維持修繕の実施状況の記録 × 過去の修繕履歴。借りる人にはあまり関係ない
最近のトレンド:中古住宅と安心のための措置

最後に、近年の法改正で重視されている「中古住宅(既存建物)」と「契約不適合責任」について触れておきます。ここも試験に出やすいホットな分野です。

既存建物(中古)の売買・交換の場合

中古住宅を買う時、「雨漏りしないかな?」「シロアリは大丈夫?」と不安になりますよね。そこで、以下の説明が求められます。

ポイント
  • 建物状況調査(インスペクション):専門家による調査を過去1年以内に実施したかどうか。実施しているなら、その結果の概要。
  • 設計図書等の保存状況:建物を建てた時の図面や点検記録が残っているかどうか。

これらは「貸借」の場合でも、1のインスペクションの有無は説明が必要ですが、2の書類保存状況は不要です。

契約不適合責任の履行措置

万が一、物件に欠陥があった場合(契約不適合)、売主が責任を負うことになります。その責任を確実に果たせるように、「保証保険」に入っているか、などを説明します。これは「売買」では必須ですが、「貸借」では説明不要です。

まとめ:今日覚えるのは「貸借の例外」

長くなってしまいましたが、重要事項説明書の内容は一気に覚えようとするとパンクしてしまいます。今日は、以下の「貸借(特に建物の賃貸)では不要なもの」だけを頭に入れて終わりにしましょう。

【建物の貸借で説明しなくていいものリスト】

ポイント
  • 法令上の制限の多く(建ぺい率・容積率など)→ 建て替えしないから不要!
  • 私道負担に関する事項→ 道路の権利関係はオーナーの問題だから不要!
  • マンションの修繕積立金・管理費の額→ オーナーが払うものだから不要!
  • マンションの維持修繕の記録→ 建物の資産価値の話だから不要!
  • 契約不適合責任の履行措置(保険など)→ 売買特有の話だから不要!

まずはこの「不要リスト」を覚えるだけで、過去問の選択肢が驚くほど切れるようになります。「借りる人の立場になって考える」ことが、正解への近道ですよ。

焦らず、一つひとつクリアしていきましょうね。