【宅建試験】計算問題は怖くない!報酬額の上限を「場合分け」で完全攻略

【宅建試験】計算問題は怖くない!報酬額の上限を「場合分け」で完全攻略 宅建

こんにちは。宅建試験の勉強は順調に進んでいますか?権利関係や法令上の制限など、覚えることが山積みで「もう頭がパンクしそう」と感じている方もいるかもしれませんね。

さて、前回の記事までは基本知識や賃貸のルールを中心にお話ししてきましたが、今回は多くの受験生が苦手意識を持ちやすい「報酬の上限(計算問題)」について深掘りしていきます。

「数字が出てくると急に難しく感じる……」「3%とか5%とか、どれを使えばいいの?」

そんな不安も、状況を一つずつ整理していけば必ず解けるようになります。この分野は計算式さえ覚えてしまえば、確実に点数を稼げる「得点源」です。今日は、売買の計算を中心に、試験に出やすいポイントを一緒に整理していきましょう。

宅建業法における「報酬」の基本ルール

まずは、具体的な計算に入る前に、「報酬」とはそもそも何なのか、どういうルールで守られているのかを確認します。ここを理解しておくと、計算結果が何を意味しているのかがイメージしやすくなりますよ。

報酬=成功報酬という考え方

宅建業法で言う「報酬」とは、私たちが普段耳にする「仲介手数料」のことです。不動産屋さんは、依頼を受けて物件を案内したり契約書を作ったりしますが、原則として「契約が成立して初めて」報酬を受け取ることができます。

つまり、どれだけ頑張って案内しても、契約に至らなければ1円ももらえない「成功報酬」なんですね。また、報酬が支払われるタイミングも、基本的には「売買契約が締結された後」になります。

例外として、依頼者から「特別にこの広告を出してほしい」と頼まれた場合の広告費用などは、契約の成否に関わらず別途受け取ることができます。でも、これはあくまで例外です。
違反した場合のペナルティは重い

この「報酬額」には、法律で厳格な上限(天井)が決められています。もし、決められた上限を超えて報酬を要求したり受け取ったりすると、非常に重い罰則が待っています。

ポイント
  • 上限を超える額を要求した場合:1年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金(またはその両方)
  • 上限を超える額を受領した場合:100万円以下の罰金

「ちょっとくらい多めにもらってもバレないだろう」という甘い考えは通用しません。試験でも「名目が何であれ、実質的に報酬とみなされるものは上限に含まれる」といったひっかけ問題が出ることがあるので、この厳しさは覚えておきましょう。

【売買】報酬額の計算式と上限の特例

それでは、いよいよ本題の計算式に入ります。売買(土地や建物の売り買い)の仲介をした場合、不動産屋さんはいくらまで報酬をもらえるのでしょうか。

基本の計算式(速算式)を覚えよう

物件の価格(代金)によって、掛け率が変わります。以下の表を見てみましょう。

売買代金 計算方法(上限額)
200万円以下 取引価格 × 5%
200万円超 〜 400万円以下 取引価格 × 4% + 2万円
400万円を超える 取引価格 × 3% + 6万円

試験で最もよく出るのは、400万円を超える物件です。例えば、2,000万円の土地であれば、「2,000万円 × 3% + 6万円 = 66万円」が、税抜きの報酬上限額となります。この「3%+6万円」という数字は、必ず暗記しておきましょう。

【重要】空き家等の売買に関する特例(令和7年度改正点)

ここが最近の試験で狙われやすいポイントです。地方にある古い空き家など、価格が安い物件(低廉な空家等)の場合、上記の計算式通りだと報酬が数万円にしかならず、不動産屋さんの赤字になってしまうことがあります。そこで、以下のような特例が認められています。

ポイント
  • 対象:売買代金が800万円以下の物件
  • 特例内容:上記の計算式に関わらず、30万円(+消費税)を上限として受領できる

ただし、これには条件があります。「媒介契約を結ぶときに、あらかじめ依頼者に説明して合意を得ておくこと」が必要です。この特例を使えば、売主・買主の双方からそれぞれ最大33万円(税込)ずつ、合計66万円まで受け取ることが可能になります。

「媒介」と「代理」の違いで上限が変わる

計算式を覚えたら、次は「誰から、いくらもらえるか」というパズルを解いていきます。ここは「媒介(仲介)」なのか「代理」なのかによってルールがガラリと変わるので、落ち着いて整理しましょう。

1. 媒介(仲介)の場合の原則

媒介というのは、売主と買主の間に入って契約をまとめる、一般的な仲介の形です。ここでの鉄則は以下の通りです。

ポイント
  • 依頼者(契約したお客さん)からしか報酬はもらえない
  • 依頼者の一方から受け取れる上限は、先ほどの計算式(3%+6万円など)まで
  • 課税事業者の場合は消費税(1.1倍)、免税事業者の場合はみなし仕入れ率(1.04倍)を乗じる

【具体例:2,000万円の物件売買】計算上の報酬上限(税抜):2,000万円 × 3% + 6万円 = 66万円

パターンA:当事者の一方から依頼された場合売主から依頼を受けた宅建業者Aは、売主から最大で72万6,000円(66万円×1.1)を受け取れます。(※相手方の買主からはもらえません)

パターンB:当事者の双方から依頼された場合(両手取引)宅建業者Aが、売主と買主の両方から依頼を受けた場合。売主から最大72万6,000円、買主からも最大72万6,000円を受け取れます。つまり、合計で145万2,000円まで受け取ることが可能です。

「媒介」は、売主・買主それぞれに対して「片手分」ずつ請求できる、とイメージすると分かりやすいですよ。
2. 代理の場合の原則

次に「代理」です。これは、依頼者に代わって契約を結ぶ権限を持つ、より強い立場の業務です。代理の場合、報酬の上限枠が少し特殊になります。

ポイント
  • 依頼者1人から、「媒介の場合の上限額の2倍」まで受領できる
  • ただし、取引全体で受け取れる合計額は、双方代理の場合でも「2倍」を超えてはいけない

【具体例:2,000万円の物件売買(代理)】媒介の場合の片手分上限(税込):72万6,000円

パターンA:売主から代理の依頼を受けた場合宅建業者Aは、売主から片手分の2倍、つまり145万2,000円まで受け取ることができます。

パターンB:売主・買主の双方から代理依頼を受けた場合ここが引っかかりやすいポイントです。「両方から2倍ずつもらえるの?」というと、そうではありません。取引全体で受け取れるのは、あくまで「片手分の2倍(145万2,000円)」が天井です。

例えば、売主から145万2,000円を全額受け取ったら、買主からは1円も受け取れません。売主から100万円、買主から45万2,000円というふうに、合計が範囲内なら配分は自由です。「代理は、1人からガツンと2倍もらえるけど、全体の上限パイは増えない」と覚えておきましょう。

貸借(賃貸)における報酬ルールの違い

最後に、貸借(アパートや店舗を借りる場合)のルールをサクッと確認します。売買とは違い、「居住用」か「それ以外(事業用)」かでルールが分かれます。

居住用建物(アパート・マンション)の場合

原則として、依頼者の一方から受け取れる報酬は「家賃の0.5ヶ月分(+税)」までです。ただし、依頼者の承諾を得ている場合に限り、一方から「1ヶ月分(+税)」を受け取ることができます。

いずれにせよ、貸主と借主の双方から受け取る合計額は、「家賃の1ヶ月分(+税)」を超えてはいけません。もし貸主から承諾を得て1ヶ月分をもらったら、借主からは何ももらえないことになります。

居住用以外の建物(店舗・事務所)の場合

こちらは原則から少し緩やかです。権利金の授受がない場合、貸主・借主の双方から受け取れる報酬の合計が「家賃の1ヶ月分(+税)」以内であれば、配分は自由です。「0.5ヶ月ずつ」という縛りはありません。

まとめ:今日覚えるべきポイント

計算問題はルールさえ分かれば怖くありません。最後に、今日お話しした中でこれだけは持ち帰ってほしいポイントをまとめます。

ポイント
  • 売買の基本公式(400万円超)は「3%+6万円」。まずはこれを暗記!
  • 800万円以下の空き家等は、特例で30万円(+税)までOK(要説明・合意)。
  • 媒介は「双方から1倍ずつ」、代理は「片方から2倍まで(合計も2倍まで)」。
  • 居住用の賃貸は、原則0.5ヶ月分。承諾があれば1ヶ月分まで。
  • 合計額の上限を超えて受け取ったら、罰則があることを忘れない。

最初は表を見ながらでも構いません。過去問の計算問題をいくつか解いてみると、「あ、このパターンか!」と気づけるようになります。毎日コツコツと、1問ずつでも触れていくことが合格への近道です。焦らず、一つひとつ自分の知識にしていきましょう。