宅建の勉強を始めてテキストを開いたとき、「漢字ばかりで頭が痛くなる…」と感じたことはありませんか?
特に法令上の制限という分野に入ると、聞き慣れない法律用語が一気に増えるため、ここで挫折しそうになる方も少なくありません。私自身も最初は、「市街化区域」と「市街化調整区域」の文字を見ただけで、どっちがどっちだったか混乱してしまいました。
でも、安心してください。都市計画法は、丸暗記しようとすると大変ですが、「街づくりのストーリー(流れ)」として理解すると、意外とすんなり頭に入ってくるものです。
この記事では、宅建試験で必ずと言っていいほど出題される「都市計画法の基本」について、難しい言葉をできるだけ噛み砕いて解説します。まずは全体像を掴んで、苦手意識を少しずつ減らしていきましょう。
そもそも、なぜ「都市計画法」なんていう堅苦しい法律があるのでしょうか。
もし、この法律がなかったらどうなるか想像してみてください。静かな住宅街の真ん中に突然大きな工場ができたり、大自然の山奥にポツンと超高層ビルが建ったりしたら、住みにくいし、街としての機能もバラバラになってしまいますよね。
都市計画法の目的は、「日本全体をより住みやすい街にすること」です。
ただ単にビルを建てて発展させるだけが目的ではありません。自然を守りつつ、住む場所、働く場所、買い物をする場所などのバランス(調和)を整えて、計画的に街を作っていくためのルールブックなのです。
なるほど…。ルールがないと、ぐちゃぐちゃな街になってしまうから、あらかじめ計画を立てるんですね。
その通りです!「どこに何を建てていいか」を決めることで、みんなが快適に暮らせるようにしているんです。
多くの方がこの分野で混乱してしまうのは、細かい用語の意味から覚えようとしてしまうからです。まずは、街づくりの「3段階の流れ」をイメージすることから始めましょう。
- ステップ1:都市計画区域の指定「まずは、日本のどこのエリアで街づくりをするか?」という、大まかな場所(区域)を決めます。
- ステップ2:都市計画の決定決めたエリアの中で、「ここは住宅地にしよう」「ここは自然を残そう」といった具体的なプランを決定します。
- ステップ3:都市計画の制限決定したプランを守るために、「ここでは勝手に開発してはいけない」「建物の高さはここまで」といったルール(制限)を作ります。
今自分が勉強しているのが、この3つのステップのどこにあたるのかを意識するだけで、頭の中が整理されやすくなりますよ。
さて、ここからが宅建試験でよく出るポイントです。日本全国の土地は、大きく分けると「都市計画区域」と「都市計画区域外」に分かれます。
そして、街づくりを積極的に行う「都市計画区域」の中は、さらに細かくグループ分けされています。ここをしっかり区別できるかどうかが、得点アップの鍵です。
都市計画区域の中を、「どんどん街にする場所」と「自然を残す場所」に分けることを、専門用語で「区域区分」といいます。またの名を「線引き」とも呼びます。
ここで登場するのが、皆さんがよく混乱する以下の3つのエリアです。
| 市街化区域 | すでに街になっている場所、または「おおむね10年以内」に優先的・計画的に街にしていく場所。 |
| 市街化調整区域 | 街になるのを「抑制(よくせい)」すべき場所。自然や農地を守るエリア。 |
| 非線引都市計画区域 | 上記のどちらにも区分されていない(線を引いていない)場所。「とりあえず様子見」のエリア。 |
ここは「街」です。人がたくさん住んでいて、お店やビルが立ち並ぶエリアをイメージしてください。試験対策としては、「すでに市街地」という言葉と、「おおむね10年以内に市街化」という数字の部分をセットで覚えておきましょう。
ここは引っ掛け問題が出やすい要注意ポイントです。
「市街化調整区域」は、市街化を「抑制(=おさえる)」する場所です。決して、市街化を「禁止」する場所ではありません。「禁止」と書かれていたらバツになります。
「建物は建てにくいけれど、絶対にダメというわけではない」という、少しあやふやなニュアンスを含んでいることを理解しておくと安心です。
「禁止」じゃなくて「抑制」なんですね!ここ、間違えて覚えちゃってました。
そうなんです。農家さんの家など、条件を満たせば建てられるものもあるので、「絶対禁止」ではないことを覚えておきましょう。
もう一つ、忘れてはいけないのが「準都市計画区域」です。
これは、本来は「都市計画区域の外」にある場所です。しかし、高速道路のインターチェンジ付近など、放っておくと勝手に建物が建って乱開発されそうな場所を指します。
準都市計画区域とは:現に相当数の建物があり、そのまま放置すれば将来の街づくりに支障が出る恐れがある場所。
つまり、「本格的な都市計画区域ではないけれど、ある程度のルール(準じたルール)を決めておかないとマズい場所」とイメージしてください。ここも試験では狙われやすいキーワードです。
ここまで読んで、「やっぱり覚えることが多いな…」と感じたかもしれません。しかし、都市計画法は満点を狙わなくても、基本を落とさなければ合格ラインには届きます。
効率よく勉強を進めるために、以下の手順を意識してみてください。
いきなり「開発許可が必要な面積は…」といった数字の暗記に入ると挫折します。まずは今日解説したような、「市街化区域ってどんな場所?」「市街化調整区域との違いは?」という言葉の意味(定義)を自分の言葉で説明できるようにしましょう。
「市街化区域=どんどん建てる」「調整区域=なるべく建てない」といったシンプルなイメージを持つだけでも、過去問の読みやすさが変わります。
都市計画法の問題は、用語を入れ替えた「ひっかけ問題」が多く出題されます。
- 「市街化調整区域は、市街化を禁止すべき区域である」→ ×(抑制すべき区域)
- 「準都市計画区域は、都市計画区域の中に指定される」→ ×(外に指定される)
このように、似ているけれど違う部分を比較しながら覚えるのがコツです。無料の過去問アプリや、一問一答形式の問題集を使って、この「違い」に敏感になる練習をしていきましょう。
都市計画法は、私たちが住んでいる街を快適にするための大切なルールです。難しい用語も、身近な風景に置き換えてイメージすることで、少しずつ親しみが湧いてくるはずです。
今日は、以下の3点だけしっかり覚えて勉強を終わりにしましょう。
- 市街化区域は、すでに街、または10年以内に街にする場所。
- 市街化調整区域は、市街化を「抑制」する場所(禁止ではない!)。
- 準都市計画区域は、都市計画区域の「外」だけど、放置できない場所。
この区別がつくだけでも、都市計画法の全体像がかなりクリアに見えてくるはずです。焦らず、一つひとつ知識を積み重ねていきましょう。
次回の勉強では、これらの区域で「具体的にどんな建物を建てていいのか」というルール(用途地域)について触れていけると良いですね。まずは今日学んだ定義を、通勤時間やスキマ時間に思い出してみてください。

