こんにちは。宅建試験の勉強、順調に進んでいますか?
「法令上の制限」という分野に入ると、急に聞きなれない漢字の用語が増えてきて、テキストを開くのが億劫になってしまうこと、ありますよね。
特に「都市計画法」は、私たちの生活の基盤となる街づくりの法律なのですが、規模が大きすぎてイメージしづらいのが難点です。
私自身も勉強を始めたばかりの頃は、「区域区分」や「市街化調整区域」といった言葉の羅列に圧倒されて、「結局、何を覚えればいいの?」と途方に暮れていました。
でも、安心してください。この分野は、法律が作られた「理由」や「背景」を知ると、丸暗記しなくてもスッと頭に入ってくるようになります。
今回は、都市計画法の根幹ともいえる「区域区分(線引き)」について、その仕組みと試験での重要ポイントを整理していきましょう。一緒に、街づくりのルールを紐解いていきましょうね。
まず、具体的な用語に入る前に、全体像をざっくりとイメージしてみましょう。
日本全国の土地は、どこでも好き勝手に開発していいわけではありません。街づくりを計画的に進める必要がある場所として、まずは「都市計画区域」というエリアが指定されます。これが、いわば「街づくりの土俵」です。
都市計画区域が指定されると、その区域内で「どこを開発して、どこを自然のまま残すか」という基本的な方針を定める必要があります。
これを法律用語で「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」と呼びます(法6条の2)。少し長い名前ですが、要するに「街づくりのグランドデザイン」のことですね。
たとえば、ある地方都市の例を見てみましょう。
- 駅周辺の中心部は、高層ビルや商業施設を集めて便利にする(再開発)
- 郊外の歴史ある村落や農地は、そのままの風景を守る(保全)
このように、開発する場所と守る場所のバランスを取る方針があらかじめ決められます。この方針がないと、無秩序に開発が進んでしまい、住みにくい街になってしまうからです。
方針が決まったら、次は実際に地図上でエリアを分けていきます。
もし、都市計画区域内のすべての場所で一斉に工事を始めたらどうなるでしょうか?道路や下水道などのインフラ整備が追いつかず、自治体の予算もパンクしてしまいますよね。
そこで、「ここからこっちは積極的に街にするけど、こっちはまだ田んぼのままにしておこう」というように、線引きをする必要が出てきます。これを「区域区分」といいます。
通称「線引き」とも呼ばれるこの制度。試験対策上は、「無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため」に行われるものだと理解しておきましょう。
さて、ここからが本日のメインテーマであり、宅建試験でも非常によく問われるポイントです。
区域区分(線引き)が行われると、都市計画区域は大きく2つのグループに分かれます。それが「市街化区域」と「市街化調整区域」です。この2つの違いを、自分の言葉で説明できるようになることが合格への近道です。
まずは「市街化区域」です。名前の通り、「市街化(=街にすること)」を推進するエリアです。定義は以下の2つです。
- すでに市街地を形成している区域(既成市街地)
- おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域
ここで重要なキーワードは「10年以内」です。「将来的に」といった曖昧な表現ではなく、ここ10年くらいの間でガンガン開発を進めていこう、という意思表示がされている区域なのです。
そのため、この区域では家を建てたり道路を作ったりすることが推奨されます。また、どんな建物を建てていいかを決める「用途地域」は、この市街化区域には必ず定めなければなりません。
対して、「市街化調整区域」です。こちらは「市街化を抑制すべき区域」と定義されています。
「禁止」ではなく「抑制」という言葉が使われていますが、実質的にはかなり厳しい制限がかかります。原則として、新たに建物を建てたり、宅地造成をしたりすることができません。
これを理解しておくと、試験問題で「市街化調整区域では開発行為が自由に行える」といった選択肢が出たときに、即座に「×(間違い)」と判断できるようになります。
また、市街化調整区域には、原則として「用途地域」を定めません。そもそも建物を建てることを想定していないエリアなので、「住居専用」や「商業地域」といった使い方のルールを決める必要がないのです。
ここまで「線引き」の話をしてきましたが、実はすべての都市計画区域で必ず線引きが行われるわけではありません。
都市計画区域の中には、市街化区域にも市街化調整区域にも分けられていない場所が存在します。これを実務上「非線引き区域」と呼びます(法律上の正式名称は「区域区分が定められていない都市計画区域」)。
これは、人口がそれほど多くなく、厳密に開発エリアと保全エリアを分けなくても、今のところ問題がないような地方の都市でよく見られます。
ただし、以下のエリアでは必ず区域区分を定めなければなりません。
- 三大都市圏(東京、大阪、名古屋周辺など)
- 政令指定都市の都市計画区域
- その他、特に必要があると指定された区域
逆に言えば、これら以外の一般的な都市計画区域では、区域区分を定めるかどうかは「選択制(任意)」ということになります。この「必須か任意か」のひっかけ問題は、過去問でも散見されるので注意しておきましょう。
少しややこしくなってきたので、日本全国の土地を都市計画法の視点で整理してみましょう。以下の5つのカテゴリーに分類できます。
- 市街化区域(積極的に開発。用途地域は必ず定める)
- 市街化調整区域(開発を抑制。用途地域は原則定めない)
- 非線引き都市計画区域(線引きしていない。用途地域は定めても定めなくてもいい)
- 準都市計画区域(都市計画区域外だが、乱開発を防ぐために指定。用途地域を定めることができる)
- 都市計画区域外(規制がほとんどない場所)
試験対策としては、特に①と②の違い、そして「用途地域を定めるかどうか」の組み合わせを正確に覚えておくことが重要です。
いかがでしたか?「区域区分」という言葉の響きは難しそうですが、要は「開発する場所」と「守る場所」を分けているだけ、というシンプルな構造が見えてきたのではないでしょうか。
都市計画法は、丸暗記しようとすると大変ですが、このように「なぜそうなっているのか」という制度の趣旨を理解すると、得点源にできる科目です。
最後に、今日の記事でここだけは覚えておきたいポイントを整理しました。寝る前にこれだけチェックしてみてくださいね。
- 区域区分(線引き)は、無秩序な市街化を防ぐために行われる。
- 市街化区域は、既成市街地またはおおむね10年以内に市街化を図る区域。
- 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域(家は原則建てられない)。
- 市街化区域には用途地域を必ず定めるが、市街化調整区域には原則定めない。
- すべての都市計画区域で線引きをするわけではない(非線引き区域もある)。
焦らず一つひとつ、知識を積み重ねていきましょう。今の頑張りが、必ず合格へとつながっています。

