毎日のお仕事と勉強、本当にお疲れ様です。民法のテキストを開くと、「虚偽表示」や「善意の第三者」といった漢字の羅列が出てきて、読むだけで眠くなってしまうことはありませんか?
私自身、勉強を始めたばかりの頃は「なんでわざわざ難しい言葉を使うんだろう…」とため息をついていました。でも、この「虚偽表示」は、実はストーリーで考えるととても人間臭くて、イメージしやすい分野なんです。
本ブログでは、法律用語にアレルギーがある方でも「なるほど!」と思えるように、噛み砕いて解説していきます。今日は、試験でもよく問われる「当事者同士のウソ」と「巻き込まれた第三者」のルールを一緒に整理していきましょう。
まずは言葉の意味からスッキリさせましょう。虚偽表示(きょぎひょうじ)とは、一言で言えば「相手とグルになってつく嘘」のことです。
「通謀(つうぼう)虚偽表示」とも呼ばれますが、「通謀」とは「示し合わせて」という意味ですね。これとよく似た言葉に「心裡留保(しんりりゅうほ)」がありますが、こちらは「自分ひとりでつく嘘(冗談)」でした。対して、虚偽表示は「相手も巻き込んでいる」という点が最大の違いです。
試験でよく出る具体例を見てみましょう。
【事例】Aさんは借金があり、自分の土地が差し押さえられそうになっています。そこで、友人のBさんに頼んで、「売ったことにして名義だけ変えておいてよ」と持ちかけました。Bさんも承諾し、実際には売買していないのに、登記の名義をBさんに移しました。
これが典型的な虚偽表示(仮装譲渡)です。
この場合、AさんとBさんの間の契約は「無効」となります。
二人とも「本当に売買する気」なんてこれっぽっちもないですよね。お互いに嘘だと分かっているので、法律で守る必要はありません。ですから、AさんはいつでもBさんに対して「土地を返して」と言えますし、Bさんが「俺の名義だから俺のものだ!」と主張しても認められません。
さて、ここからが宅建試験の本番です。当事者同士(AとB)なら「無効」で終わりですが、Bさんが裏切って、何も知らないCさん(第三者)に土地を売ってしまったらどうなるでしょうか?
「えっ、Bさんひどい! でも名義はBさんにあるし、Cさんはお金を払って買ったんだよね?」
そうなんです。ここで、本来の持ち主であるAさんと、買ったばかりのCさんのどちらを保護すべきか?という問題が発生します。
民法では、「虚偽表示による無効は、善意の第三者に対抗できない」と定めています。
つまり、Cさんが事情を知らない(善意)場合、AさんはCさんに「返して!」とは言えません。土地はCさんのものになります。
ここで重要なキーワード「善意・悪意」をおさらいしておきましょう。法律の世界で「善意」とは、「いい人」という意味ではなく「(その事情を)知らない」という意味でしたね。
なぜCさんが勝つのかというと、そもそも「嘘の登記」という紛らわしい外観を作ったのはAさん本人だからです。「自業自得」のAさんよりも、何も知らずに取引に入ったCさんを守ろう、というのが民法の考え方です。
試験対策として、以下のポイントは必ず覚えておきましょう。
「善意かつ無過失」まで求められる分野もありますが、虚偽表示に関しては「善意」だけで保護されるというのが大きな特徴です。
ここ数年の試験で狙われやすいのが、さらにその先、DさんやEさん(転得者といいます)が登場するパターンです。少し複雑に見えますが、「盾(シールド)の理論」でイメージすると一発で理解できます。
もし、Bさんから買ったCさんが「善意(事情を知らない)」だったとします。この時点で、Cさんは確定的に所有権を取得します。
その後、CさんがDさん(転得者)に土地を売りました。この時、Dさんが事情を知っている「悪意」だったとしても、Dさんは保護されます。
「えっ? Dさんは悪意なのに守られるんですか?」
はい、大丈夫です。一度、善意のCさんが所有権を確定させた時点で、その権利は「完璧なもの」になります。完璧な権利を買ったDさんは、自分自身の善意・悪意に関係なく、Aさんに対抗できるのです。これを「絶対的構成」なんて呼んだりしますが、要は「一度でも善意の人が挟まれば、その後の人は全員セーフ」と覚えておきましょう。
逆に、Cさんが事情を知っている「悪意」だった場合はどうでしょう。この場合、Cさんは保護されず、無権利者となります。
しかし、そのCさんから買ったDさん(転得者)が「善意」であれば、Dさんは保護されます。前の人がダメでも、今の人が「善意」なら、そこでリセットされて保護されるのです。
つまり、転得者に関しては以下のルールで判断すればOKです。
「自分の前に一人でも『善意』の人がいれば勝ち! いなくても自分が『善意』なら勝ち!」
こう考えると、パズルみたいで少し楽しくなってきませんか?
虚偽表示は、登場人物が増えると混乱しがちですが、基本のルールはとてもシンプルです。今日の学習の仕上げに、ここだけは頭に入れておきましょう。
「善意なら保護される」という基本を押さえつつ、「転得者」の問題が出たら、図を書いて誰が善意かをチェックしてみてくださいね。こういった契約の効力に関するルールは、一度理解してしまえば大きな得点源になります。
焦らず一つひとつ、確実に自分の知識にしていきましょう。明日も、あなたの勉強を応援しています!

