宅建試験の勉強、本当にお疲れ様です。民法の分野に入って、いきなり「詐欺(ぎもう)」という言葉が出てきて、「この契約、どうなるの!?」と混乱していませんか。「有効」「無効」「取消し」「善意」「悪意」など、普段使わない言葉がたくさん出てくるので、法律の勉強が初めてだと、どうしても身構えてしまいますよね。私自身も最初は、これらの法律用語がごちゃ混ぜになり、過去問を解くたびに間違えていた苦い経験があります。
ですが、「詐欺」の論点は、いくつかのパターンに分けて整理してしまえば、実は得点源にしやすい単元なんです。今日は、宅建試験で頻出の「詐欺」のルールについて、「そもそもどういう意味か」という基本から、最も複雑な「第三者が絡むケース」まで、一つずつわかりやすく解説していきます。
この記事を読み終える頃には、「詐欺」の問題で何をチェックすべきかがハッキリと理解できているはずです。一緒に不安を解消していきましょう。
「有効」と「無効」の違いが、いまいちピンとこないんだよね…
まず、法律用語の定義から確認します。
そして、この「詐欺」が起こった場合の契約の扱いは、宅建試験の超重要ポイントの一つです。
詐欺による契約は、「無効(最初から効力がない)」ではなく、「有効だが、後から取り消すことができる」とされています。この「取消せる」という点が、無効となる「錯誤(さくご)」や「公序良俗違反」などとの大きな違いとなり、試験でも狙われやすい部分です。
なぜ異なる扱いになるのか、その背景をシンプルに考えてみましょう。
例えば、Bさんに騙されて、本当は100万円の価値しかない宝石を「300万円だ」と信じて購入したAさんのケースで考えてみます。
Aさんは「300万円で買う」と意思表示をしました。
このとき、Aさんの「内心の意思(買いたいという気持ち)」と「表示(買いますという発言)」は一致しています。騙されているとはいえ、「この宝石が欲しい」という意思自体は持っているからです。
「意思(本当に思っていること)と表示(外に出した言葉)が一致している」ため、原則として契約は有効(いったん成立している)と見なされます。しかし、だまされて契約させられたのはかわいそうなので、Aさんに「やっぱりやめる!」と後から契約を撤回するチャンスを与えている、これが「取消し」なのです。
「取消しができる期間」は無制限ではありません。以下の2つの期間が設定されており、どちらか短い方が適用されます。
追認とは、取消しができる状態の契約を「もうこのままでいいよ」と認めることです。つまり、詐欺に気づいて「いつでも契約をやめられるぞ」という状態になってから5年以内にアクションを起こさなければならない、ということですね。期間を過ぎると、その契約は確定的に有効となってしまいます。追認や取消権の放棄については、関連論点として併せて学習していきましょう。
宅建試験の民法で、「詐欺」が絡む問題のほとんどは、「第三者(契約の当事者ではない人)」が関係するケースが出題されます。誰が保護されるのかが、パターンによって変わってくるため、ここでつまずく初学者が非常に多いです。
「第三者」が絡む論点には、大きく分けて3つのパターンがあります。この3つを図でイメージしながら、一つずつ整理していきましょう。
このケースは、契約相手ではないCさんが、Aさんをだまして、Bさんとの契約を結ばせた場合です。Aさん(騙された人)とBさん(契約相手)のどちらを保護すべきか?が問題になります。
Aさん(騙された)
Bさん(契約相手)
結論は、「Bさん(契約相手)が、Aさんがだまされていたことを知っていたか(悪意)、知ることができたか(有過失)どうか」で決まります。
これは、Bさんに落ち度がない(知らなかったし、知ることもできなかった)なら、わざわざBさんを犠牲にしてまでAさんを保護する必要はない、という考え方に基づいています。この条文は「契約相手の知っている・知れた」というポイントだけをチェックすれば良いため、混乱しやすい善意・悪意といった法律用語の理解を深める絶好の機会です。
AさんがBさんに土地を売却(A-B契約)。その後、BさんがCさんにその土地を売却(B-C契約)。その後になって、Aさんが「あの契約はBの詐欺だった!」と気づき、A-B間の契約を取り消した場合、Cさん(取消し前の第三者)との関係はどうなるかという問題です。
この場合、Cさんが、Aさんがだまされていたことを知っていたか(悪意)どうかで結論が変わります。
ここでのポイントは、「Bさんは、詐欺によって一旦は有効に所有権を取得している」という点です。所有権を持っているBさんから、Cさんが法律上適法に購入したわけですから、取引の安全を守るために、Cさんの「善意無過失」であればCさんが保護されます。
最後に、AさんがBさんに土地を売却(A-B契約)。AさんがBに売却する前に、A-B間の契約を詐欺を理由に取り消した。契約はさかのぼって(遡及的に)無効になったため、所有権はAさんに戻った。しかし、Bさんが勝手にCさんに土地を売却した(B-C契約)。
この時点で、土地の所有権を主張している人がAさんとCさんの二人になり、「Aさん」と「Cさん」の二重譲渡の関係になります。
二重譲渡では、「どちらが先に登記を備えたか」で勝敗が決まります。
パターン2(取消し前)では、Cさんの善意・悪意が問題になりましたが、パターン3(取消し後)では、Cさんがだまされていたことを知っていたかどうかは関係ありません。
取り消しによってAに所有権が戻ったとしても、その後のAとCの関係は「早い者勝ち」の対抗関係と見なす、と覚えるようにしましょう。
取消し「前」は善意無過失が大事。
取消し「後」は登記が大事!
そう考えると、整理しやすいかも。
宅建の民法の中でも、特に「詐欺」と「第三者」の関係は複雑に感じられ、勉強のペースを乱してしまうかもしれません。しかし、試験で問われるのは、今日解説した3つのパターンと、契約の効力(取消しができる)という基本ルールだけです。
今日はまず、「取消し前の第三者」と「取消し後の第三者」の違いを頭の中で完全に区別できるようにしましょう。
【今日、これだけは覚えておきたいポイント】
不安に感じていた方も、この3つのポイントをしっかり整理できれば、本番で得点できる力がついているはずです。毎日少しずつ、着実に知識を積み重ねていきましょう!
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