宅建の「強迫」は詐欺より強力!?取り消し後の第三者への対抗をわかりやすく解説

宅建の「強迫」は詐欺より強力!?取り消し後の第三者への対抗をわかりやすく解説 宅建

宅建試験の勉強、本当にお疲れ様です。民法の「意思表示」の分野は、日常では使わない言葉や、微妙なルールの違いが多くて、最初は「何が何だか…」と混乱してしまいますよね。

特に「詐欺」と「強迫」は、どちらも「だまされた」「脅された」という点で似ていますが、法律上の効果や、守られるべき人が大きく異なります。この違いが試験でもよく狙われるポイントです。

今回は、その中でも特に重要な論点である、民法96条の「強迫(きょうはく)」について、法律の知識がゼロの方でもイメージできるように、要点を絞って解説していきます。

この記事を読み終える頃には、「強迫」の論点で問われたときに、どう考えれば正解にたどり着けるか、その判断基準がきっと明確になっているはずです。

まずは、「強迫」という言葉の定義と、宅建の勉強でよく比較される「詐欺」との違いを理解していきましょう。

法律上の「強迫」とは、他人に害悪を加えることを告げて脅し、相手を怖がらせて(畏怖させて)契約を結ばせることを言います。

「この土地を安く売らないと、家族に危害を加えるぞ!」と脅されて、しぶしぶ売買契約を結んでしまった、というようなケースですね。

宅建試験で重要になるのは、この強迫によって契約した人の「意思表示」の扱いです。

ポイント
  • 意思表示はある:脅された結果であっても、「売る」という意思を持って「売ります」と表示しています。
  • しかし、意思決定に瑕疵(かし)がある:自由な意思で決めたのではなく、脅しという「欠陥」がある状態で意思表示をしてしまった、ということです。

このような瑕疵ある意思表示は、民法96条1項により、あとで「取り消す」ことができます。

ちなみに、強迫という漢字には「強」の字が使われています。「脅」という字を使う刑法の「脅迫罪」とは異なる点にも注意しましょう。

強迫と詐欺(だまされた)は、どちらも「取消し」ができる点で共通していますが、法律が契約をした人を保護する強さが大きく違います。

結論から言えば、「強迫」は「詐欺」よりも強力で、強迫を受けた人は手厚く守られます。

なぜ強迫の方が保護が手厚いのかというと、「詐欺」はだまされた側にも注意不足(落ち度)がある可能性があるのに対し、「強迫」は、脅された側には何の落ち度もない、と考えられているからです。

「脅されてまで結ばされた契約は、例外なく取り消せて当然だ」という考え方が、強迫の論点の根っこにあることを知っておくと、スムーズに覚えられますよ。

ここからは、宅建試験で最も出題されやすい、「第三者が関わってきた場合の強迫のルール」について、2つのパターンを整理していきましょう。

この論点では、先に結論をしっかり頭に入れることが大切です。「善意・悪意、対抗する」といった基本用語が不安な方は、先にこちらの記事で確認しておくと安心です。

強迫を働いた人が、契約の相手方ではなく、別の第三者だった場合のケースです。

この場合、Aさんは、Bさんが強迫の事実を知っていたか(悪意か)、知らなかったか(善意か)に関係なく、Bさんに対して契約を取り消すことができます。

つまり、強迫のケースでは、詐欺のルールである民法96条2項(相手方が強迫の事実を知り、又は知ることができたときに限り、取り消すことができる)は適用されません

「Aさんが脅されて無理やり契約させられたんだから、相手のBさんが事情を知っていたかどうかは関係ないよ!」という、強迫を受けた人を徹底的に守るルールだと理解しましょう。

AさんがBさんから強迫を受けて契約し、その後、Bさんが別のCさん(第三者)にその不動産を売ってしまった(転売した)場合のケースです。

この場合も、結論はAさんが勝てます。

Aさんは、Cさんが「強迫があったことを知っていたか(悪意か)」「知らなかったか(善意か)」に関係なく、取消しをもってCさんに対抗することができます。

なぜなら、民法96条3項(善意無過失の第三者には、取消しを対抗できない)という第三者保護の規定は、強迫には適用されないからです。

これも、「脅されて結んだ契約は、すべてチャラにして、脅された人を救うべき」という強い考え方に基づいています。

この強力なルールを知っておけば、試験のひっかけ問題にも惑わされずに対応できます。

強迫の論点は、出題形式はほとんど決まっています。「詐欺」のルールと比較しながら、以下のポイントを整理して覚えていきましょう。

文字だけで覚えようとすると混乱しやすいので、人(A・B・C)と行為(強迫・契約・転売)を図にして、「どの状況で誰が誰に勝てるか」で覚えるのがおすすめです。

強迫においては、以下のたった2つの結論だけ覚えればOKです。

「強迫」はとにかくAさん(脅された人)最強!と覚えてしまいましょう。

試験では、強迫と詐欺を意図的に混ぜたひっかけ問題が必ず出ます。特に次の表は、必ずセットで整理して覚えましょう。

この違いを覚えることが、合格への大きな一歩になります。

比較ポイント 詐欺(民法96条2項) 強迫(民法96条)
第三者からの行為 相手方Bが善意無過失なら取消し不可(Bが保護される) 相手方Bが善意無過失でも取消し(Aが保護される)
取消し後の転売先C Cが善意無過失なら取消しを対抗不可(Cが保護される) Cが善意無過失でも取消しを対抗可(Aが保護される)

詐欺の場合は、契約の相手方Bや転売先のCが「その事実を知らないうえに、知ることに落ち度がない(善意無過失)」であれば、その人たちを保護するルール(善意無過失の第三者保護規定)があります。

しかし、強迫の場合は、相手方や第三者がどんな状態であっても、脅された人(A)の勝ち、と覚えてしまえばOKです。

「強迫は善意の第三者にも対抗できる!」この一文を何度も唱えて、確実に記憶に定着させていきましょう。

今回は、宅建民法の意思表示の中でも重要度の高い「強迫」について解説しました。

強迫は、他の論点に比べてルールがシンプルで覚えやすいため、得点源にしやすい分野です。

今日学んだ知識をすぐにアウトプットできるよう、この2つのポイントだけはしっかり覚えておきましょう。

ポイント
  • 強迫による意思表示は、詐欺と同じく「取り消す」ことができる。
  • 強迫による取消しは、いつでも、誰に対しても主張できる(強迫を受けた人が最強)。

この「強迫を受けた人(A)は最強」というイメージが定着すれば、必ず正解にたどり着けるはずです。地道な積み重ねが、必ず合格につながります。一緒に頑張りましょう!