【宅建民法】「成年被後見人」って誰?試験で狙われる「同意権がない理由」を優しく解説

【宅建民法】「成年被後見人」って誰?試験で狙われる「同意権がない理由」を優しく解説 宅建

こんにちは。宅建試験の勉強、順調に進んでいますか?

民法の勉強を始めると、聞き慣れない漢字の用語がたくさん出てきて、「うわっ、難しそう…」と身構えてしまうこと、ありますよね。私も最初はそうでした。

特に「制限行為能力者」の分野は、似たような名前の登場人物が4人も出てくるので混乱しやすいポイントです。

今回は、その中でも特に試験でよく問われる「成年被後見人(せいねんひこうけんにん)」について詳しく解説していきます。

漢字だけ見ると難しそうですが、実はイメージさえ掴んでしまえば、覚えることはシンプルなんです。「なぜそういうルールになっているのか?」という背景を知ることで、暗記を減らして得点源に変えていきましょう。

成年被後見人とは?まずはイメージから掴もう

法律用語を覚えるときは、具体的なイメージを持つことが一番の近道です。

成年被後見人とは、精神上の障害などにより、判断能力を欠く常況にある人のことを指します。

もう少し噛み砕いて言うと、重度の認知症などが原因で、自分の財産を管理したり契約を結んだりすることが、常に難しい状態にある方のことです。

もし、このような状態の方が一人で不動産の売買契約をしてしまったらどうなるでしょうか?

相場より極端に安い金額で大切な自宅を売ってしまったり、必要のない高額な商品を契約させられてしまったりするかもしれません。それでは本人の生活が守れませんよね。

そこで、法律で「保護者」をつけて守ってあげよう、というのがこの制度の目的です。

どうやって「成年被後見人」になるの?

ただ単に「判断能力がない」というだけでは、法的な成年被後見人にはなりません。

本人や配偶者、4親等内の親族(または検察官など)が家庭裁判所に申し立てを行い、「後見開始の審判」を受けることで、初めて正式に成年被後見人となります。

このあたりの全体像については、以前の記事「制限行為能力者」ってなに?4つの種類と保護のルールを優しく解説でも触れていますので、まだ読んでいない方は合わせて確認しておくと理解が深まりますよ。

成年被後見人を守る「成年後見人」の役割

成年被後見人(守られる人)がつくと、セットで必ず「成年後見人(せいねんこうけんにん)」という保護者が選任されます。

言葉が似ていて混乱しやすいですが、「被(ひ)」がついている方が「(保護を)被る人=守られる人」と覚えましょう。

誰が成年後見人になるの?

成年後見人は、家庭裁判所が一番ふさわしいと判断した人を選びます。

ここでの試験対策ポイントは以下の2点です。

ポイント
  • 法人がなることもできる(社会福祉法人や弁護士法人など)
  • 複数人選ばれることもある(一人でなくてもOK)

「保護者は必ず親族でなければならない」とか「一人だけでなければならない」といったひっかけ問題が出ることがあるので、注意してくださいね。

【最重要】ここが出る!成年後見人の3つの権限

さて、ここからが本番です。宅建試験で合否を分けるのは、この保護者(成年後見人)が持っている「権限」の理解です。

成年後見人には、本人を守るために強力なパワーが与えられていますが、一つだけ「持っていない権限」があります。ここが非常によく出題されます。

持っている権限
  • 代理権(本人に代わって契約する)
  • 取消権(本人が勝手にした契約を取り消す)
  • 追認権(本人がした契約を後から認める)
持っていない権限 同意権
ポイント
  • 代理権(本人に代わって契約する)
  • 取消権(本人が勝手にした契約を取り消す)
  • 追認権(本人がした契約を後から認める)
なぜ「同意権」がないの?

ここを丸暗記しようとすると忘れてしまいます。理由を考えてみましょう。

「同意権」とは、「あなたがその契約をすることに賛成します(同意します)」という権限です。

しかし、成年被後見人は「判断能力を欠く常況にある人」でしたよね。

たとえ後見人が事前に「この土地を売る契約をしてきていいよ」と同意を与えたとしても、本人がその通りに行動できるかどうか、判断能力の面で不安が残ります。同意した内容とは全く違う契約をしてきてしまう可能性も高いのです。

そのため、法律は「事前に同意を与えることには意味がない」と考え、成年後見人には同意権を与えていません。

ここは試験で「成年後見人の同意を得て行った行為は取り消すことができない」といった形で出題されますが、そもそも同意権がないので、同意があっても取り消せます。騙されないようにしましょう。

なお、契約の後始末に関する「追認」については、「追認」の重要ポイント解説記事も参考にしてみてください。

取り消せる行為と、取り消せない例外

成年被後見人が成年後見人に黙って勝手に行った契約は、原則として後から取り消すことができます。

「やっぱりこの契約はなかったことにします」と言えるわけですね。これにより、本人の財産が守られます。

ただし、どんな行為でも取り消せてしまうと、日常生活に支障が出てしまいます。

例外:日用品の購入は取り消せない

スーパーでシャンプーや食料品を買うたびに、「後見人の同意がないから取り消されるかも…」とお店側が不安に思って売ってくれなくなったら、本人は生活できなくなってしまいますよね。

そのため、「日用品の購入」「その他日常生活に関する行為」については、成年被後見人が単独で行ったとしても、取り消すことができません。

取り消しができるかどうかの判断や、取り消した後の効力については、「契約の効力」を整理した記事でも詳しく解説していますので、余力があればチェックしておきましょう。

まとめ:今日の重要ポイント

成年被後見人と成年後見人の関係、少しイメージできましたか?

判断能力が不十分だからこそ、手厚く守る。でも、日常生活までは制限しない。このバランス感覚が大切です。

最後に、試験直前でもここだけは思い出してほしいポイントを整理します。

ポイント
  • 成年被後見人は「判断能力を欠く常況」にあり、家裁の審判を受けた人。
  • 成年後見人には「同意権」がない。(事前に同意しても意味がないから!)
  • 成年被後見人の行為は原則取り消せるが、「日用品の購入」は取り消せない
  • 成年後見人は法人でもOK、複数人でもOK。

特に「同意権がない」という点は、制限行為能力者の中でも成年後見人だけの特徴なので、試験委員もよく狙ってきます。

「同意しても無駄だからないんだな」と理由づけて覚えておけば、本番でも迷わず正解を選べるはずです。

一つひとつ整理していけば、民法は決して難しくありません。焦らず一歩ずつ進んでいきましょう!