債務不履行=約束破り!宅建試験で頻出の「損害賠償」と「解除」のルール

債務不履行=約束破り!宅建試験で頻出の「損害賠償」と「解除」のルール 宅建

こんにちは!宅建試験の勉強、順調に進んでいますか?

民法の勉強をしていると、普段の生活では聞きなれない漢字四文字の言葉がたくさん出てきて、それだけで「うっ…」となってしまうこと、ありますよね。私自身も最初は、テキストを開くたびに知らない言葉のオンパレードで、頭を抱えていた記憶があります。

でも、安心してください。法律用語は「日常の言葉」に置き換えてイメージすれば、決して怖いものではありません。

今回のテーマは「債務不履行(さいむふりこう)」です。

これだけ見ると難しそうですが、要するに「約束を破ること」です。この「約束破り」が起きたときに、法律ではどうやって解決するのか?というお話になります。宅建試験では非常に基本的な部分であり、ここを理解しておくと、後の「契約解除」や「損害賠償」の問題もスムーズに解けるようになりますよ。

今日は肩の力を抜いて、この債務不履行の仕組みと、試験で問われるポイントを一緒に整理していきましょう。

債務不履行の基本イメージをつかもう

まずは、言葉の意味から整理していきますね。「債務不履行」とは、正当な理由がないのに、契約などで決めた約束を守らないこと(義務を果たさないこと)を指します。

これを理解するために、まずは「債権(さいけん)」と「債務(さいむ)」という言葉をスッキリさせておきましょう。

「債権」と「債務」の関係性

例えば、あなたがAさん(買主)で、Bさん(売主)から土地を買う契約をしたと想像してください。

ポイント
  • 買主A(あなた):お金を払う義務(債務)があるけど、土地を引き渡してもらえる権利(債権)がある。
  • 売主B(相手):土地を引き渡す義務(債務)があるけど、代金をもらえる権利(債権)がある。

このように、契約をするとお互いに「相手に何かをしてもらえる権利=債権」と、「相手に何かをしなければならない義務=債務」を持ちます。

このとき、もしあなたが「代金を払う日になっても払わない」としたらどうでしょう?これは、あなたが負っている「代金を支払う義務(債務)」を果たしていない状態ですよね。これが債務不履行です。

逆に、あなたがちゃんとお金を用意したのに、売主Bさんが土地を引き渡してくれない場合も、Bさんの債務不履行となります。

債務不履行になるとどうなる?

相手が約束を破った(債務不履行になった)場合、約束を守ってもらえなかった人(債権者)は、黙って泣き寝入りするわけにはいきません。法律では、主に次の3つのことができると定められています。

ポイント
  • 損害賠償請求:「約束を破られたせいで損をしたから、お金で償って!」と請求すること。
  • 契約解除:「約束を守らないなら、もうこの契約はナシにする!」と契約をやめること。
  • 強制執行:裁判所の力を借りて、無理やり約束を果たさせること。

宅建試験では、特に「損害賠償」と「契約解除」がよく出題されます。あらかじめ契約で「もし約束を破ったら〇〇万円払うこと」と決めておくケースもあります。これについては、「損害賠償額の予定」に関する記事で詳しく解説していますので、合わせて確認しておくと得点源になりますよ。

試験に出る!債務不履行の「3つの種類」

さて、ここからが本番です。一口に「約束を破る」といっても、その破り方にはパターンがあります。民法では大きく分けて3つの種類があり、試験でもこの区別が重要になってきます。

1. 履行遅滞(りこうちたい)

これは、文字通り「遅れている」状態です。「やろうと思えばできるのに、期限を過ぎてもやっていない」ケースを指します。

例えば、「月末までに家賃を振り込む約束だったのに、忘れていて振り込んでいない」ような場合です。まだ履行することは可能ですが、期日には遅れていますよね。これが履行遅滞です。

2. 履行不能(りこうふのう)

これは、「もうできなくなってしまった」状態です。契約をしたときは大丈夫だったのに、後から何らかの事情で約束を果たすことが不可能になってしまったケースです。

例えば、「売買契約をした建物が、引渡し前に火事で全焼してしまった」ような場合です。家がなくなってしまった以上、もう引き渡すことはできませんよね。遅れているだけなら待てばいいですが、不能の場合は待っても意味がありません。

3. 不完全履行(ふかんぜんりこう)

これは、「一応やったけど、中身が不十分」な状態です。約束通り実行したつもりでも、内容が約束と違っていたり、足りなかったりするケースです。

例えば、「注文した数と違う数が届いた」とか、「買った家に欠陥があった」という場合がこれにあたります。最近の民法改正で注目されている「契約不適合責任」とも深く関わる部分です。プロとアマの取引におけるこのルールについては、「契約不適合責任」の解説記事も参考にしてみてください。

債務不履行が成立するための「2つの条件」

「約束を守らなかったら、即座にすべて債務不履行として責任を取らされるのか?」というと、実はそうではありません。債務不履行として責任を追及するためには、以下の2つの条件が揃っている必要があります。

ここが試験のひっかけポイントになりやすいので、要チェックです!

条件1:債務者に責任があること(帰責事由)

これを法律用語で「帰責事由(きせきじゆう)」と言います。簡単に言うと、「わざと、または、うっかりミスがあった」ということです。

例えば、先ほどの火事の例で考えてみましょう。

ポイント
  • 売主のタバコの不始末で家が全焼した:これは売主に「過失(うっかりミス)」があるので、債務不履行になります。
  • 隣の家からの延焼や、大地震で家が全焼した:これは売主にはどうしようもないこと(不可抗力)ですよね。この場合、売主には責任がないため、原則として損害賠償などは請求できません。

また、ここで覚えておきたいのが「履行補助者(りこうほじょしゃ)」の過失です。例えば、家賃の振込みを同居人に「これ払っておいて」と頼んだのに、その同居人がうっかり忘れてしまった場合。

「私が忘れたんじゃない、同居人が忘れたんだ」という言い訳は通用しません。この場合、手足となって動いてくれる人(履行補助者)のミスは、本人のミスと同じとみなされます。本人の「故意・過失」だけでなく、関係者のミスも責任に含まれるという点を覚えておきましょう。

ちなみに、民法では「善意(知らない)」「悪意(知っている)」などの独特な言い回しがよく出ます。基礎用語に不安がある方は、善意・悪意などの法律用語解説記事でサクッと確認しておくと、理解が早まりますよ。

条件2:債務不履行が「違法」であること

これは、「約束を守らないことに、正当な理由がない」という意味です。逆に言えば、「約束を守らなくてもいい正当な理由」があれば、債務不履行にはなりません。

一番わかりやすい例が「同時履行の抗弁権(どうじりこうのこうべんけん)」です。

例えば、売主Bさんが土地を引き渡す準備をしていないのに、「先に代金を払え!」と言ってきたとします。このとき、買主Aさんが「土地をくれるまで、お金は払いません!」と言って支払いを拒否しても、これは債務不履行(履行遅滞)にはなりません。

なぜなら、「あなたがやるべきことをやっていないんだから、私だってやりません」というのは、お互い様であり、正当な理由(違法性がない)だからです。

しかし、相手がちゃんと準備をしているのに、「お金が用意できなかった」などの理由で支払わない場合は、当然ながら違法となり、債務不履行が成立します。

まとめ:今日の「これだけ」覚えよう!

債務不履行について解説してきましたが、いかがでしたか?「難しそう…」と思っていた言葉も、具体的な状況をイメージすると当たり前のことを言っているな、と感じていただけると思います。

最後に、今日の学習で絶対に持ち帰ってほしいポイントを整理します。

ポイント
  • 債務不履行とは「約束破り」のこと。原則として損害賠償や契約解除ができる。
  • 種類は3つ!「履行遅滞(遅れ)」「履行不能(無理)」「不完全履行(中途半端)」
  • 責任を問うには「過失」が必要。本人だけでなく、頼んだ人(履行補助者)のミスも本人の責任になる。
  • 正当な理由があればセーフ。「相手がやってくれないから自分もしない(同時履行)」などの場合は、履行しなくても責任を負わない。

この分野は、これから学ぶ多くの論点の基礎になります。まずは「3つの種類」と「責任があるかないかの判断基準」をしっかり押さえておきましょう。

焦らず一つひとつ、確実に知識を積み重ねていけば大丈夫です。応援しています!