【宅建民法】「使用者責任」は求償のルールが命!信義則上の限度とは?

こんにちは!宅建試験の勉強、順調に進んでいますか?

民法の勉強をしていると、「不法行為」というジャンルが出てきます。

漢字ばかりで難しく感じるかもしれませんが、要は「誰かに迷惑をかけたら、どう責任を取るか」という話です。

その中でも、試験によく出るのが「使用者責任」です。

「従業員が仕事中に事故を起こしたら、社長も責任を負うの?」「払ったお金は後で請求できるの?」

といった、実生活でもイメージしやすいテーマですね。

今回は、この「使用者責任」について、初学者がつまずきやすいポイントや、試験でひっかけ問題として出されやすい「求償(きゅうしょう)」のルールを中心に、わかりやすく解説していきます。

「法律用語は苦手……」という方も、ストーリー形式でイメージすれば大丈夫。一緒に整理していきましょう!

使用者責任とは?「社長も一緒に責任を負う」ルール

まずは、使用者責任の全体像をざっくりと掴みましょう。

民法715条では、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と定めています。

簡単に言うと、「従業員(被用者)が仕事でミスをして誰かを傷つけたら、雇っている社長(使用者)も被害者に対して弁償しなさい」ということです。

えっ、ミスをしたのは従業員なのに、社長も払わないといけないんですか?
そうなんです。社長は従業員を使って利益を上げているんだから、その従業員が起こした損害のリスクも負担すべき、という考え方(報償責任)があるんですよ。

ただし、どんな場合でも社長が責任を負うわけではありません。

試験で問われるのは、「どこまでが仕事(事業の執行)とみなされるか」という境界線です。

「仕事中じゃなかった」は通用しない?

ここで重要なのが、「外形標準説」という考え方です。

たとえ従業員が、実際には私用で会社の車を使っていたとしても、はたから見て(外形から見て)「仕事中っぽいな」と見えるなら、それは「事業の執行」に含まれると判断されます。

被害者からすれば、その人がサボり中かどうかなんて分かりませんよね。

被害者を守るために、広く「職務の範囲内」と見なして、社長にも責任を負わせるのです。

ちなみに、この「見た目で判断して相手を守る」という考え方は、民法の「表見代理」とも少し似ていますね。どちらも「相手方の信頼を守る」という点が共通しています。

【最重要】「あとで返して!」求償(きゅうしょう)のルール

さて、ここからが本日のメインテーマです。宅建試験では、被害者へ賠償したあとの「後始末」についてよく出題されます。

これを法律用語で「求償(きゅうしょう)」と言います。

「僕が立て替えて払ったから、あとで君、返してね」とお金を請求することです。

1. 社長が払った場合

被害者に損害賠償金を支払った社長は、ミスをした従業員に対して「君のせいで損をしたから、お金を返してくれ」と求償することができます。

しかし、「全額」返してもらえるとは限りません。

ここが試験に出るポイントです。

「信義則(しんぎそく)」という言葉が出てきましたね。

これは「お互い信頼裏切らないように行動しようね」という民法の基本ルールです。

詳しくはこちらの記事で「信義則」などの基本用語を解説していますが、要するに「常識的に考えて妥当な範囲で」ということです。

普段から過酷な労働をさせていたり、管理がずさんだったりした場合、社長が従業員に「全額払え!」というのはかわいそうですよね。だから、裁判所が「社長も悪いから、従業員への請求はこれくらいにしておきなさい」と制限をかけるわけです。

2. 従業員が払った場合(逆求償)

では逆に、従業員が自分のお金で被害者に全額弁償した場合はどうでしょうか?

昔は議論がありましたが、現在の判例・改正民法では、従業員から社長への「逆求償」も認められています。

「社長、僕が払っておきましたけど、本来は会社の責任でもありますよね? 分担分を払ってください」と言えるのです。

これも先ほどと同じく、「信義則上相当と認められる限度」で請求できます。

どちらが払ったとしても、「損害の公平な分担」をするというのが結論です。

試験で差がつく!2つの要注意ポイント

基本を押さえたところで、試験でひっかけ問題として出やすい応用論点を2つ紹介します。

① 被害者側の過失と「過失相殺」

交通事故などで、被害者側にも不注意(過失)があった場合、その分だけ賠償額を減らすことができます。これを「過失相殺(かしつそうさい)」と言います。

ここで注意したいのが、「被害者側」という言葉の意味です。

たとえば、被害者が幼児で、親が目を離していた隙に事故に遭った場合。幼児本人に過失はありませんが、「親(監督者)」の過失を「被害者側の過失」としてカウントし、賠償額を減らすことができます。

「被害者本人に落ち度はないから減額できない」というひっかけ肢に注意しましょう。

損害賠償の考え方については、債務不履行の損害賠償ルールとも似ている部分があるので、あわせてイメージしておくと定着しやすいですよ。

② 即死の場合の相続

もう一つ、非常に有名な判例があります。

「被害者が事故で即死した場合、損害賠償請求権はどうなるのか?」という問題です。

亡くなった瞬間に権利を持つ人がいなくなるから、請求できない気もします……。
そう考えると、加害者にとっては「ケガをさせるより即死させたほうが賠償しなくて済む」というおかしな結論になってしまいますよね。

そこで判例は、次のように考えます。

ポイント
  • 事故の瞬間に、被害者に「損害賠償請求権」が発生する。
  • その直後に死亡したと考える(時間的な差がゼロでも、論理的には先)。
  • その権利を相続人が相続する。

つまり、「即死であっても、損害賠償請求権は相続される」というのが正解です。

「即死の場合は本人に請求権が発生しないため、相続されない」という選択肢はバツです! 必ず覚えておきましょう。

まとめ:今日覚えるべきポイント

使用者責任は、登場人物の関係図を描きながら整理するのが合格への近道です。最後に、今日の重要ポイントをまとめます。

ポイント
  • 使用者責任とは?従業員のミスは社長も負う。見た目が仕事中なら「事業の執行」に含まれる。
  • 求償(きゅうしょう)のルール社長も従業員も、払ったほうは相手に請求できる。ただし全額ではなく「信義則上相当と認められる限度」まで。
  • 過失相殺の注意点被害者の家族(親など)の過失も「被害者側の過失」としてカウントできる。
  • 即死の判例即死でも賠償請求権は発生し、相続人が相続できる。

特に「求償」の範囲については、過去問でも繰り返し問われている超重要ポイントです。

「全額請求できる」と書いてあったら、すぐに「×」をつけられるようにしておきましょう!

一歩ずつ理解を深めて、合格に近づいていきましょうね。